網戸のひもで死亡、業者側の賠償が確定/製造物責任について
2025/06/18 コンプライアンス, 製造物責任法, メーカー

はじめに
網戸のひもが首に引っかかり女児(当時6歳)が死亡した事故をめぐり、遺族が建材大手「YKKAP」とリフォーム会社に賠償を求めた訴訟の上告審で、12日、最高裁が業者側の上告を退けていたことがわかりました。
賠償額は計約5,800万円とのことです。
今回は、製造物責任について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、亡くなった女児は2019年11月、兵庫県内の自宅で窓に設置された網戸のひもが首に引っかかったことにより死亡したとされます。
網戸はリフォームの際に設置されており、ロール式でひもで上げ下げできる構造となっており、高い場所でひもを束ねるクリップが付属していたとのことです。
しかし、出荷時にはクリップがひもに装着されておらず、取扱説明書も同梱されず、警告表示もなかったとされています。
女児の両親はYKKAPとリフォームを手掛けた「土屋ホームトピア」に対し、計約8,000万円の損害賠償を求め提訴しました。
一審大阪地裁は、クリップが付属していたことから製品に欠陥はないとして請求を棄却。
二審大阪高裁は一転、使用上の適切な警告がなかったとして欠陥を認め、計約5,800万円の支払いを命じていました。
製造物責任とは
製造物責任法(PL法)によりますと、製造業者は製造・加工した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています(3条)。
民法の不法行為責任では、損害賠償の要件として故意または過失の存在が必要とされていますが(民法709条)、PL法3条では故意または過失の立証を必要とせず、製造物の欠陥を立証することで賠償請求が可能とされています。
つまり、PL法は民法の不法行為責任の特則です。
また、民法の債務不履行責任では売主と買主など契約当事者間であれば責任追及が可能ですが、契約関係のない第三者が損害を受けた場合には責任追及が難しくなります。
しかし、PL法では欠陥と損害の因果関係が立証できれば、契約関係がなくても責任追及が可能です。
このように、製造物の欠陥から消費者を保護する制度が製造物責任です。
製造物責任の要件
製造物責任の具体的な要件としては、
(1)製造業者等が製造物を自ら引き渡したこと
(2)欠陥の存在
(3)他人の生命、身体または財産の侵害
(4)損害の発生と欠陥との因果関係の存在
が挙げられます。
まず、製造業者が自ら製造、加工または輸入し、もしくは製造物に氏名、商号、商標その他の表示をするか、誤認させるような表示を行って引き渡したことが必要です。
「引渡し」とは、自らの意思に基づく占有の移転を意味し、有償・無償は問いません。
また、「欠陥」とは、製造物が通常予見される使用形態、引き渡した時期、その他の事情を考慮して、通常有すべき安全性を欠いている場合を言います(2条2項)。
さらに、欠陥と発生した損害との間に相当因果関係が認められることが必要です(民法416条)。
指示・警告上の欠陥
PL法における「欠陥」とは、製造物に通常有すべき安全性を欠く状態を指しますが、その一類型として「指示・警告上の欠陥」があります。
これは、製品が持つ危険性を使用者が回避できるように、製造者が適切な情報を提供しなかったことによる欠陥とされます。
製品そのものの物理的な欠陥ではないものの、危険性のある製品に対して、説明書や警告表示などを通じて適切な情報提供を怠ると、それも欠陥に該当すると判断される可能性があります。
ただし、極めて稀にしか起こり得ない場合や、消費者が容易に危険を予測できる状況であれば、必ずしも警告が必要というわけではありません。
また、消費者側が想定外の使用や改造などを行った場合も、警告義務が問われない場合があります。
コメント
本件で二審の大阪高裁は、網戸にひもをまとめる付属品が装着されておらず、事故の恐れを警告する表示もなかったことから、指示・警告上の欠陥があったと認定しました。
また、リフォーム業者に対しても、説明書を渡し、ひもの危険性について説明すべき注意義務を怠ったとして、賠償責任を認めました。
最高裁は、憲法違反など上告理由に該当する事項がないことを理由に上告を棄却し、これにより約5,800万円の賠償責任が確定しました。
このように、PL法では製品そのものの欠陥だけでなく、危険性に関する説明不足も欠陥として評価される場合があります。
自社製品にどのような危険が潜んでいるかを慎重に想定し、説明書やラベルにて適切に警告を表示することが、事故防止および責任回避の観点からも重要と言えるでしょう。
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