「丸住製紙」が計画案の提出期限を延長、民事再生手続きについて
2025/06/16 事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, メーカー

はじめに
経営再建に向け民事再生手続きを進めている「丸住製紙」(四国中央市)は、返済計画などを記載した再生計画の提出期限を来年1月に延期しました。
負債総額は約590億円とのことです。
今回は、民事再生手続きについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、丸住製紙は負債総額がおよそ590億円で、今年2月に自主再建を断念して民事再生手続きに移行しており、これまでに売上の7割を占める洋紙事業から撤退した他、今月末までに従業員の大半の400人を削減する方向で調整を進めているとされます。
同社の民事再生計画案の提出期限は6月12日であったところ、不動産を含む資産の売却、事業縮小に伴う必要な対応や事業の一部譲渡などの協議に一定の期間が必要なため、東京地裁へ提出期限の延長申し立てを行っていたとのことです。
延長は13日に認められ、新たな提出期限は来年1月30日となっています。
民事再生とは
民事再生とは、経済的な困難に直面している債務者が、破産を回避して経営再建と事業の継続を目指す法的手続きを言います。
同様に会社を清算せず再建を目指す手続きとして会社更生があります。
民事再生は法人だけでなく個人も対象となるのに対し、会社更生は法人のみが対象とされています。
また、民事再生は現経営陣がそのまま手続きを進めるのに対し、会社更生の場合は現経営陣は退陣し、裁判所が選任した更生管財人の主導で手続きが進められるという点も大きな違いと言えます。
これら再建型の手続きに対し、破産や特別清算は事業を終結させることを前提としています。
そのため、破産や特別清算を裁判所に申し立てた時点で事業が停止し、会社財産はすべて換価処分され、債権者や従業員への配当に回されます。
このように倒産手続きは清算型と再建型に分けられ、民事再生は再建型の中でも現経営陣主導で行える手続きとなっています。
民事再生手続きの流れ
民事再生手続きのおおまかな流れとしては、以下となっています。
(1)裁判所への申立てと保全処分
(2)監督委員の選任
(3)民事再生手続き開始決定
(4)財産評定と財産状況の報告および債権届出
(5)債権調査と債権認否書の提出
(6)再生計画の作成・決議と再生計画の遂行
民事再生手続きは、まず裁判所への申立てを行いますが、同時に保全処分も申し立てます。
保全処分が決定すると債権者は仮差押などが禁止され、債務者も弁済が禁止されます。
監督委員が選任され、会社財産の管理処分について監督がなされます。
開始決定がなされると、債権者は再生手続きに参加する意思表示のために債権届出を行います。
再生会社は債権者からの届出や財産評定を踏まえて財産目録と貸借対照表を作成し、財産状況報告書とともに裁判所に提出します。
また、届出債権について認否を行い、認否書を裁判所に提出することもあります。
そして今後どのように債務を返済していくかの再生計画案を作成し、裁判所が定めた期間内に提出します。
再生計画案は債権者集会の決議により可決され、認可されるとその計画を遂行していくこととなります。
なお、債権者集会では参加した債権者の過半数かつ債権総額の2分の1以上の賛成が必要です。
再生計画案の作成
上でも触れたように、再生中の債務者は裁判所が定めた期限までに再生計画案を作成して裁判所に提出することとなります。
裁判所は原則として、再生計画案を債権者集会決議に付する旨の決定をします(169条1項)。
再生計画では、
(1)全部または一部の再生債権者の権利の変更
(2)共益債権および一般優先債権の弁済
(3)知れている開始後債権があるときはその内容の記載
が求められます。
再生計画案は債権者集会で可決されると、裁判所は認可決定をします(174条1項)。
再生計画が認可されるためには、その決議が再生債権者の一般の利益に反しないことが求められます(同2項)。
これは、いわゆる清算価値保障原則を満たす必要があります。
清算価値保障原則とは、破産などによって現財産を分配するよりも、再生したほうが債権者の得られる配当が多くなることを意味します。
コメント
本件で丸住製紙は、今月12日とされていた提出期限に再生計画案の提出ができず、延期の申し立てをしていたとされています。
資産の売却や事業の譲渡などについての協議に時間を要するとのことです。
来年1月末が新たな期限となっています。
以上のように、民事再生手続きでは再生計画案の作成と提出、債権者集会での可決、裁判所の認可が重要な要点となっています。
再生計画案について債権者の同意を得ることは簡単ではないとされています。
それぞれの債権者に対して、公平で誠実に説明を尽くしていく必要があります。
破産や特別清算ではなく民事再生を選択する場合には、ここで清算するよりも継続することによって債権者により利益がもたらされるのかを慎重に検討していくことが重要と言えるでしょう。
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