フォークリフトを無資格で運転させ書類送検、労働安全衛生法の規制について
2025/06/06 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
鹿児島県の畜産会社が無資格の従業員にフォークリフトを運転させ、同僚を怪我させたとして、労働基準監督署が書類送検していたことがわかりました。
今回は、労働安全衛生法の就業制限について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、畜産会社「ひらまつ」(鹿児島県鹿屋市)は2024年11月2日、同市川東町の同社工場内で、牧草ロールを運ぶために無資格の男性従業員にフォークリフト(最大荷重2トン)を運転させた疑いがあるとされます。
同日、フォークリフトの後方にいた同僚の男性がひかれ、左足首を骨折する重傷を負ったとのことです。
鹿屋労働基準監督署は3日、同社と50代の男性工場長を労働安全衛生法違反の疑いで鹿児島地検に書類送検しました。
労働安全衛生法による規制
労働安全衛生法61条1項では、「事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者、又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者、その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない」とされています。
また、労働者についても同様に、業務に就くことができる者以外は業務を行ってはならないとされています(同2項)。
一定の危険な作業に関しては、無資格者または技能講習などを受けていない者の就業を禁止し、労働者の労働災害を防止しています。
この就業制限に違反した事業者に対しては、6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反した労働者に対しては50万円以下の罰金が科されます(119条1項、120条1項)。
制限を受ける業務と必要な資格
就業制限がかかっている業務と必要な資格については、労働安全法施行令20条と労働安全衛生規則41条および別表3に定められています。
具体的には以下のようになっています。
(1)発破作業:発破技士免許等
(2)揚貨装置の運転:揚貨装置運転士免許
(3)ボイラーの取扱い:ボイラー技師またはボイラー取扱技能講習修了者
(4)クレーンの運転:クレーン運転士免許または技能講習の修了者
(5)最大荷重が1t以上のフォークリフト運転:フォークリフト運転技能講習修了者
(6)解体用車両系建設機械の運転:技能教習の修了者等
(7)最大加重が1t以上のショベルローダーの運転:運転技能講習の修了者等
(8)吊り上げ荷重が1t以上のクレーンの玉掛け:玉掛け作業技能講習修了者等
これらは一例ですが、それぞれ免許保有者や技能講習の修了が求められています。
必要な免許等
上記のように、就業制限がかかっている業務で免許が求められる場合は、厚生労働大臣が指定する指定試験機関が実施する免許試験に合格することが必要です。
関東甲信越地区では、(財)安全衛生技術試験協会で実施されています。
技能講習が求められる場合は、労働局で登録を受けた講習機関で受講する必要があります。
そして特別教育が求められる場合は、事業者自身が労働者を教育することとなります。
教育内容はそれぞれ法令で定められており、十分な知識・経験を有する者が講師となって行うことが必要です。
また、外部機関が実施する特別教育を受講させることもできます。この外部機関は労働局の登録は不要です。
コメント
本件では、無資格の男性従業員にフォークリフトを運転させ、牧草ロールを運搬させていた疑いがあるとされています。
上記のように、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転させるには、フォークリフト運転技能講習の修了が必要です。
本件では最大荷重が2トンとされており、労働安全衛生法の就業制限に抵触するものと考えられます。
以上のように、労働安全衛生法では一定の危険を伴う業務について、それぞれ免許や技能講習の受講が義務付けられています。
違反については会社と労働者いずれにも罰則が規定されています。
自社での業務にこのような規制が設けられていないか、また必要な免許や講習の受講が履践されているかを確認し直して、社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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