パナソニックが定款変更で人数制限、会社法の取締役数規制について
2025/06/04 商事法務, 総会対応, 会社法, メーカー

はじめに
パナソニックホールディングスは先月29日、定款を変更して取締役の上限を15人に制限すると発表しました。取締役会の適切な規模を明確にするとのことです。
今回は、会社法が規定する取締役の人数について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、パナソニックHDは現行定款の第17条「当会社の取締役は、3名以上とする。」との規定を「当会社の取締役は、15名以内とする。」と変更するとしています。6月23日開催予定の定時株主総会で付議する予定です。
同社は現在、取締役会の建設的な議論の推進と意思決定の機動力維持・向上のため、取締役会の員数は13名体制となっています。
しかし、定款には下限のみが規定され、上限がない状況であり、取締役会の適切な規模感を明確にする観点から今回の定款変更に至ったとのことです。
なお、監査役についても同様に、「3名以上とする」との規定を「5名以内とする」と変更する予定となっています。
取締役の人数
会社法では、「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」としています(第326条)。
取締役は、どのような株式会社であっても最低1人は置かなければならない必須の機関となっています。
上限については特に規制はなく、20人や30人設置することも可能と言えます。
そのため、原則としては取締役を1人だけという小規模な会社も多く存在しますが、一定の場合には人数に規制がかかります。
まず、会社法第331条第5項によりますと、「取締役会設置会社」の場合は取締役が3人以上必要です。
最低3名いなければ取締役会が成り立たないということです。
そして、この取締役会は、公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社では設置が義務付けられます(第327条)。
また、取締役会設置会社は、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社を除き、監査役(非公開会社では会計参与でも可)を置く必要も出てきます(同第2項)。
このように、会社法ではその会社の形態によって必要な役員等の数が厳格に定められています。
取締役の人数決定と選任
上記のように、取締役の人数に関しては会社法上一定の制約はあるものの、その範囲内では自由に決定することができます。
そして、多くの会社では定款でその員数に関する規定を置いています。
たとえば、「当会社における取締役の人数は○名以内とする。」といった具合です。
定め方もさまざまで、「○名以内とする」といったもの以外にも「○名以上置く」や「○名以上、○名以内とする」といった定め方もあり得ます。
そして、これらの規定に基づいて実際に取締役を選任するのは株主総会です(第329条第1項)。
ここでは普通決議でよいとされていますが(第309条第1項)、通常の普通決議とは異なり、定款で定足数を3分の1未満にすることはできないとされます(第341条)。
この規制は監査役や会計参与にも適用がありますが、会計監査人には適用がありません。
権利義務取締役
会社法第346条第1項によりますと、任期満了または辞任により会社法または定款で定めた員数を欠くことになった場合、その役員は新しい役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するとされています。
いわゆる権利義務役員です。
たとえば、取締役が3名の取締役会設置会社で、取締役の1人が辞任しても、次の取締役が就任するまでは引き続き取締役の地位が継続するということです。
これは会社法によって強制的に付与される地位であることから、権利義務取締役を株主総会で解任することもできず、また退任登記もできないとされています。
速やかに新しい取締役を選任するしかないということです。
なお、この規定は「役員」のみに適用されます。
そのため、役員ではない会計監査人の員数が欠けることとなっても、権利義務会計監査人とはなりません。
その場合、監査役会等が遅滞なく一時会計監査人を選任することとなります(第346条第4項〜第7項)。
コメント
本件でパナソニックHDは、現行の取締役を「3名以上とする」との規定を「15名以内とする」に変更する予定とされています。
これまでは下限のみが規定されていましたが、上限を置くことによって取締役会の適切な規模感を明確にするとしています。
同社は取締役会設置会社であることから、最低3名の取締役を必要としており、これまでの下限規定はあまり意味がないものであったと言えます。
以上のように、会社法では取締役など役員等の設置・非設置、またその員数についてかなり厳格な規定を置いています。
また、辞任や任期満了によってそれが不足することとなった場合は、新役員が就任するまでその役員が引き続き職務を継続しなければならないなど、欠員が出た場合についても規定があります。
会社の機関設計やその人数などを定款で定める場合は、これらの点についても留意しつつ慎重に検討を進めることが重要と言えるでしょう。
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