トラック運送事業「5年更新制」へ、貨物自動車運送事業法改正の動き
2025/04/21 コンプライアンス, 行政対応, 物流

はじめに
自民党トラック輸送振興議員連盟は17日、トラック運転手の適正な賃金確保に向け、貨物自動車運送事業法の改正案をまとめました。5年ごとの許可更新制を導入するとのことです。今回は貨物自動車運送事業法の法改正と改正案について見ていきます。
改正の経緯
現在物流業界では働き方改革関連法の施行に伴う、いわゆる「2024年問題」に直面しており、国民生活を支える重要なインフラである物流業界での輸送力が14%低下していると試算されております。このまま対策を講じない場合、2030年には34%低下すると言われております。そのため物流の効率化、商慣習の見直し、荷主・消費者の行動変容について抜本的かつ総合的な対策が必要となっており荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力して環境整備を進めるとされております。また軽トラック運送業で死亡事故が最近6年で倍増しているとされこの点についても対策を講じ、物流の持続的成長を図る必要があることから貨物自動車運送事業法が令和6年5月に改正され、今年4月1日から施行されました。また現在、自民党トラック輸送振興議連では悪質業者を排除するための改正案をまとめているとされております。
貨物自動車運送事業法とは
貨物自動車運送事業法とは、貨物自動車運送事業を適正かつ合理的なものとするとともに、貨物自動車運送に関する同法とそれに基づく措置の遵守等を図るための民間団体等による自主的な活動を促進することにより、貨物自動車運送事業の健全は発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的として平成元年12月に制定された法律です(1条)。簡単にまとめると、貨物自動車による物流事業の運営を正しく行うための法律です。同法での運送事業は、(1)一般貨物自動車運送事業、(2)特定貨物自動車運送事業、(3)貨物軽自動車運送事業に分かれております。一般貨物自動車運送事業とは、他人の要求に応じて運賃を受け貨物を運送する事業です。特定貨物自動車運送事業は特定の者だけから依頼を受けます。そして貨物軽自動車運送事業は軽自動車や125cc超の自動二輪による運送事業です。前2つについては国土交通大臣による許可制、貨物軽自動車運送事業については届出制となっております。無許可で営業を行った場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が規定されており、運行管理者を置かない場合は行政処分の対象となるなど物流業界における基本となる法令と言えます。
令和6年改正
上でも触れたように、2024年問題等に対応すべく令和6年に法改正がなされております。その内容は大きく(1)荷主・物流事業者に対する規制的措置、(2)トラック事業者の取引に対する規制的措置、(3)軽トラック事業者に対する規制的措置となっております。まず荷主や物流事業者に対し、物流効率化のために取り組みべき措置について努力義務を課し、国が判断基準を策定して、それに基づき指導、助言、調査、公表を実施。一定規模以上の事業者には中長期計画の作成や定期報告の義務付け、実施状況が不十分な場合は国による勧告・命令を実施。特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任義務付けとなっております。トラック事業者に関しては運送契約の締結等に際して書面交付の義務付け、元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成義務付け、発注適正化についての努力義務などが課されます。そして軽トラック事業者に関しては、必要な法令等の知識を担保するため管理者選任と講習受講、国交大臣への事項報告義務付けなどが追加されております。
今回の改正案
今回の改正案ではトラック運転手の適切な賃金の確保に向け、悪質事業者を排除するためにトラック運送事業について5年ごとに許可する更新制度を導入するとしております。上でも触れたように貨物軽自動車運送事業以外では国交大臣による許可制となっておりますが法改正が実現した場合、5年ごとに更新が必要となる見通しです。また許可基準に労働者の適切な処遇を確保することなども盛り込まれるとされます。不当に低廉な運賃で運送させることを防ぐため、国交大臣が適正原価を定め、それを下回らないよう義務付けるとのことです。罰則は設けず行政指導の対象となるとされます。また無許可のいわゆる白トラでの運送については100万円以下の罰金も盛り込まれるとのことです。
コメント
近年、物流業界では人手不足が叫ばれており、またかねてから2024年問題でさらに物流業界における輸送力が低下すると指摘されております。それを受け労働法だけでなく物流関連法令についても改正の動きが出てきております。上でも述べたように今年からはまず運送契約締結等に際しての書面交付義務や運送事業に関する適正化への取り組みが既に開始しております。また今現在検討されている改正案についても今国会で議員立法の形で提出される見通しです。近年労働関係法令の法改正が相次いでおりますが、本件のような特定の事業分野に関する法改正も進んでおります。自社の事業にどのような法令が適用されているのか、またどのような改正の動きが出ているのかを慎重にチェックしておくことが重要と言えるでしょう。
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