「ほっかほっか亭」運営会社、エイプリルフールのSNS投稿で物議/嘘投稿の法的リスク
2025/04/07 コンプライアンス, 行政対応, 広告法務, 景品表示法, 刑事法, 外食

はじめに
毎年4月1日は“うそをついてもよい”日、エイプリルフールとして広く知られています。この日に合わせてSNSなどで企業も、嘘の投稿をし、消費者に冗談を届けるようになってきました。しかし、消費者から“笑えない”冗談とみなされ、企業が謝罪する事態に陥ることもあります。
4月1日には、「ほっかほっか亭」の運営会社が公式Xで投稿した内容に批判が集まり、同日中に謝罪することとなりました。
“ライスの販売停止”の投稿で批判集まる
全国に830店舗余り展開されている弁当チェーン「ほっかほっか亭」。その「ほっかほっか亭」を運営する株式会社ほっかほっか亭総本部は4月1日、Xの公式アカウントで「ライスの販売停止について」とするコメントをつけ、以下の内容が書かれた文書の動画を投稿しました。
「本日、令和7年4月1日より米の価格高騰を鑑みて、全国のほっかほっか亭 全店でのライスの販売を停止します。(中略)ライスの代わりと言ってはなんですが、おかずトリオやオードブルをご購入いただけますと幸甚です。今後は、このような事態が発生しないように、より一層運用体制の強化に努めてまいります。」
投稿には「#エイプリルフール」とハッシュタグがついていました。
しかし、この投稿を見た消費者の中には事実か嘘か分からず戸惑う人もおり、会社には「本当にライスの販売をやめるのか」という問い合わせが約20件あったということです。
SNS上でも一定の騒ぎとなりました。昨今、コメの仕入れ価格が上昇しているうえ、その影響もあってか、2月には「ほっかほっか亭」のほとんどの店舗で弁当の値上げを行っています。
そのため、会社は4月1日午後に「皆さまを動揺させてしまい、配慮が足りなかったと感じております。大変申し訳ございません」とXに謝罪投稿を行いました。
問題となった嘘の投稿は社内の担当部署が作成し、役員もチェックしていたということです。
うその結婚報告を広報担当が投稿し削除
2025年のエイプリルフールでは他の企業の投稿も物議を醸しました。
ライブ配信などオリジナルプラットフォーム制作事業を手がける株式会社 BACKSTAGE 代表の男性と元フジテレビアナウンサーの女性が二人で映る写真に“二人が結婚した”という趣旨のコメントをつけて、同社広報担当の女性が投稿したものです。
しかし、広報の女性は代表に対し、事前に写真を投稿する旨伝えていなかったとみられます。
そのため、当該投稿に対して「さすがにこれはやりすぎ。消して」と投稿を引用する形で広報の女性に削除を要請しました。女性は削除した上で、「“結婚報告”に関するエイプリルフール投稿について、多くの方に不快な思いをさせてしまい大変申し訳ございませんでした」とお詫びしました。
投稿は、投稿後1時間以内に削除されました。しかし、多くの人がスクリーンショットを保存していたため、投稿が拡散されたということです。
企業等に関する嘘投稿の法的リスク
すっかり定着した感のある、企業や官公庁によるエイプリルフールの嘘投稿。
一方で、4月1日の投稿だからといって、法的責任を直接的に軽減する根拠とはならない点には注意が必要です。
まず、投稿により、他人の社会的評価や信用を失墜させたり、経済的損失を与える等した場合には、名誉棄損罪や信用毀損罪に問われるおそれがあります。
また、自社に関する虚偽の情報の拡散を従業員個人が行い、自社の業務に支障をきたす事態を招いた場合には、偽計業務妨害罪に問われる可能性もあります。
さらに、近年流行している“架空商品の発売発表”についても、景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示で不当表示として規定されている「取引に応じることができない商品又はサービスについての表示(おとり広告)」に該当するとして、措置命令の対象となるおそれもあります。
コメント
今回のエイプリルフール投稿の炎上騒動に対し、SNSでは「ふざけ方を考えてほしい」「フェイクニュースが横行する時代に合わない」などと批判の声が上がりました。
エイプリルフールで企業が投稿する際には、
・エイプリルフールの投稿であることを明らかにする
(例:ハッシュタグで#エイプリルフールと表記する)
・本当か、嘘か分かりにくい内容は避ける
エイプリルフールの投稿はあくまで冗談の範囲内に収め、投稿を見た消費者などがクスッと笑える程度に留める必要があります。
エイプリルフールに限らず、SNSの投稿内容の事前チェック体制を複数人で確認する仕組みを作るなど整備することが重要です。
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