船井電機会長が「船井電機新社」設立、会社設立手続きについて
2025/05/28   商事法務, 会社設立, 会社法, メーカー

はじめに


現在、破産手続が進んでいる船井電機の会長が5月27日、船井再建の代替策として新会社の設立を行っていたことがわかりました。
新会社の社名は「船井電機新社」とのことです。

 

事案の概要


当初、破産手続きの取り消しや民事再生法適用を求めていた船井電機の会長。しかし、裁判所はいずれも退けていました。そこで、再建の代替策として新会社を設立する方針を公表したと考えられています。

今回新設された「船井電機新社」は資本金3,000万円で、本店所在地は東京都中央区。
代表取締役は船井電機の会長が務めるとのことです。

事業内容としては、電化製品の製造などを手掛けるとし、元従業員のうち希望者を優先的に再雇用する方針といいます。
また、船井電機の子会社などの資産も取得していく方針とのことです。

 

会社の設立


会社法では株式会社の設立手続きとして、発起設立と募集設立を用意しています。

発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方式をいいます(会社法25条1項1号)。
募集設立とは、発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、残りを引き受ける者を募集する方式をいいます(同2号)。

募集設立は、出資の扱いや創立総会の開催、設立時役員の選任など発起設立に比べて手続きが煩雑なものとなっており、実務的にはほとんどが発起設立で設立されているとされています。

また、これらは株式会社の設立に関する手続きであり、それ以外の持分会社などについては別途手続きが用意されています。
さらに新設合併や株式移転など、組織再編による設立についても別に規定が置かれています。

 

発起設立の手続き


発起設立のおおまかな流れは、
(1)定款作成、(2)出資、(3)設立時役員の選任、(4)設立手続の調査、(5)設立登記となっています。

まず、発起人は定款を作成する必要がありますが、そこに記載しなければ定款自体が無効となってしまう絶対的記載事項として、目的、商号、本店所在地、出資額、発起人の氏名・名称住所、発行可能株式総数があります(27条1項各号)。

それ以外にも、定めた場合は定款に記載する必要がある記載事項として、株式の内容、種類株式、株主名簿管理人、変態設立事項などがあります。

変態設立事項は現物出資や財産引受、発起人の報酬などで、この記載がある場合は原則として検査役の調査を要します(33条1項)。

定款の公証人による認証後、発起人は出資を行います。
発起人の引き受ける株式数、それに対する出資額や計上される資本金・準備金について定款または発起人全員で決定します(32条1項)。

出資が終わると設立時役員を選任します(38条1項)。
この選任は定款で定めることもできますが、発起人の引き受けた株式数に応じた議決権によって決議をします(40条1項、2項)。

設立時取締役と監査役は選任後、遅滞なく設立手続きに問題がないか調査し、問題があれば発起人に通知します(46条2項)。
そして、最後に設立登記をして会社が成立となります(49条)。

 

募集設立の場合


募集設立の場合も発起人による定款作成や出資など、基本は発起設立と同様ですが、設立時発行株式の引受人を募集するという点で大きな違いがあります。

まず募集する株式の数や払込金額、払込期日や期間などを発起人の全員で決めます(58条1項、2項)。
それら募集事項を引き受け申込みをしようとする者に通知し、通知を受けた者で申込みをしようとする者は原則書面で申込みます(59条3項、4項)。

その中から発起人が割当を行い、割り当てられた引受人は払込期日または期間内に払込を行います(63条1項)。
その後発起人は遅滞なく創立総会を招集し、設立に関する事項の報告と設立時役員の選任を行います(87条、88条)。

出資に関して1つ注意点があり、発起設立と異なり募集設立では払込取扱金融機関に払込金保管証明の交付をしてもらう必要があります(64条1項)。
これは設立登記の際に添付します。

 

コメント


本件で設立された新会社の資本金は3,000万円となっています。
かつて旧商法時代は最低1,000万円必要でしたが、現行会社法では理屈上1円でも可能です。

しかし、資本金は会社の信用力にも影響するので、慎重に設定するほうが良いといえます。
設立登記の際の登録免許税は資本金に1,000分の7を乗じたもの(15万円に満たない場合は15万円)となります。

本件では資本金が3,000万円となっており、登録免許税は21万円となります。

以上のように、株式会社の設立には発起設立と募集設立の2パターンが用意されており、それぞれ会社法上厳格な規制が置かれています。
特に定款の記載や認証、発起人の引受や出資、変態設立事項規制など、手続きを間違うと設立無効となり得るポイントも多くあります。

会社設立の際には専門家指導の下、慎重に手続きを進めていくことが重要と言えるでしょう。

 

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