海外子会社でのインサイダー取引相次ぐ、内部統制の不足に指摘も
2025/02/26   海外法務, コンプライアンス, 会社法, 刑事法

はじめに
日本企業の海外子会社社員がインサイダー取引を行っていた事件の報道が相次いでいます。
今年1月にはLINE、2023年9月にはZOZO、いずれも海外子会社でインサイダー取引が行われ、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令を出すよう、金融庁に勧告を行いました。
海外子会社での不正を防ぐための対策を後半でまとめています。
LINE韓国子会社元社員に課徴金
1月17日、証券取引等監視委員会は、無料通話アプリ大手、LINE株式会社(現・LINEヤフー株式会社)の韓国子会社の元社員が海外在住中にインサイダー取引を行ったとして、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、金融庁に約1400万円の課徴金納付を命ずるよう勧告を行いました。
勧告の対象となったのは、当時、LINEの海外の子会社に勤務していた外国籍の元社員(40代)です。
2020年3月26日、LINEはフードデリバリー大手、株式会社出前館に追加出資することを発表。出前館はLINEを引受先の一つとする第三者割当増資を行い、資本業務提携することになりました。
韓国在住だった元社員はこの発表が行われる前に、LINE株式会社の元社員から情報を入手。元社員は同年3月11日から26日午前9時50分ごろまでの間に、親族名義で出前館株 計1万6600株を1108万6300円で買い付けるインサイダー取引を行いました。情報公表後、株価が上昇。元社員は公表後に売却し、約615万円の利益を得ていました。
ZOZOの海外子会社でもインサイダー取引が発覚
証券取引等監視委員会は2023年9月には、衣料品通販大手、株式会社ZOZOの中国子会社の50代役職員に対し1303万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告しました。
ZOZOの元社員から「ヤフーが2019年9月12日にZOZOの株を公開買い付けする」と伝えられた役職員は、情報公表2日前の9月10日、知人を通じて計2万5977株を合計5489万5128円で取得したとされています。
情報管理不足などの問題指摘
こうした相次ぐ不正の発覚を受け、日本企業全般における、海外子会社の社員教育や情報管理の脆弱性が指摘されています。
海外子会社での不正予防のため、収支の流れや在庫の管理の徹底、適切な内部統制の構築を行うことが重要です。具体的な対策例として、以下が挙げられます。
・定期的な売上レポートの提出義務(海外子会社→親会社)
・キャッシュフロー管理
・内部監査の実施
・内部通報制度の整備
他にも、事務所や倉庫へのアクセスを制限し、機密情報の閲覧・共有に関する厳格なルールを設けることも効果的です。
特に、インサイダー取引を防ぐためには、情報管理の徹底が求められます。内部情報は特定の部門の特定の担当者のみにアクセス権限を限定するといった対策をとり、機密情報に触れられる機会を制限することも必要でしょう。
コメント
インサイダー取引防止のキーとなる情報管理。
日本取引所自主規制法人が2024年3月に発表した「第5回 全国上場会社インサイダー取引管理アンケート(回答2261社)」の調査報告書によると、各社が行っている情報管理の方策のうち、以下の方策が前回調査時から5%以上増えているといいます。
・情報に重要度区分を付けて重要度に応じた管理をしている
・情報の伝達可能な範囲を規程上明示している
・情報伝達時に情報管理の責任者(上長等)に報告している
・伝達情報に重要事実が含まれていることを相手に伝えている
・役職員に対して情報の取扱いに係る守秘義務規定を設けている
・特定のプロジェクトについて、検討開始時点から管理している
各上場会社において、情報管理の重要性を意識して業務を行っている傾向がうかがえます。
インサイダー取引の問題は会社の信頼性に直結します。企業全体でのコンプライアンス意識を高めたうえで、情報管理を徹底し、リスクを最小限に抑えることが求められています。
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 加藤 賢
加藤 賢
 五反田 美彩 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
五反田 美彩 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)








