パワハラされたのに懲戒処分は不当と主張、JR東日本の若手社員が会社を提訴
2025/02/07 労務法務, 危機管理, 労働法全般, 刑事法

はじめに
東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)の男性社員は1月31日、自身が上司から暴行やパワハラを受けたにも関わらず、逆に加害者とされて懲戒処分と出向処分を受けたのは不当だとして、JR東日本などに対し処分取り消しと慰謝料を求め、東京地方裁判所に提訴しました。
懲戒処分などの撤回求め提訴
報道などによりますと、2024年4月15日、原告である24歳の男性社員は武蔵小金井駅での勤務中に上司と口論になりました。その後、男性社員と上司は一時的に和解したものの、業務態度を巡り、再び口論に。
男性社員の主張によると、その際、上司から肩のあたりをつかまれ、ソファに押さえつけられる暴行を受けたとのことです。
男性社員は「パワハラですよ、やめてください」などと訴えたものの、上司は聞き入れず。肩にあった上司の手が首元に移動し、息苦しさを感じるほどだったといいます。
その後、もみ合いになり、他の社員が駆けつけて、ようやく2人は引き離されたといいますが、その際、男性社員が上司から逃れようと両手で突き飛ばしたところ、上司が尻もちをついてしまったということです。
同年5月、男性社員とJR東日本の首都圏本部マネージャーが、4月15日に起こったトラブルについて面談を実施。そこで「上司への暴行だから罪が重くなる」などと言われ、反省しないと重い処分が下ると告げられたといいます。この面談を受けて、男性社員は反省文を提出しました。
その後、7月になって会社は男性社員に対し、出勤停止20日間の懲戒処分と3年間の関連会社への出向を命じました。
処分を受け、男性社員は東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)に加入。団体交渉を通じて、処分の不当性を訴えるとともに、処分の撤回を求めました。しかし、会社側はこれに応じず。今年1月31日に提訴した形です。
裁判で男性社員は、懲戒処分の撤回のほか、会社と上司に対し慰謝料100万円の支払いなどを求めています。
従業員同士のトラブル対処について
上司と部下間で起きたトラブルが、訴訟にまで発展した今回のJR東日本の裁判。今後、訴訟を通じて、トラブルのあった当日の事実関係や会社側が行った処分の適否などが明らかになっていく見通しです。
一方、上司・部下間、同僚間など、従業員同士で口論や暴力沙汰となるケースは少なからずあり、他の会社も他人事ではいられません。自社で従業員同士のトラブルが発生した際にどのような対応をとるべきか、事前に整理・確認しておくことが大切です。
その中で、最も重要と言えるのが「適切な調査の実施」です。トラブル発生時の状況を把握するべく、被害者、加害者、目撃者、関係者などから話を聞く必要があります。
【ヒアリングのポイント】
(1)ヒアリングは必要に応じて複数回行うことが推奨されます。それにより、具体的な状況が鮮明になり、加害者側において同情すべき点などが見えてくる部分があります。
(2)ヒアリングした内容は、整理したうえで書面化します。その後、本人に内容を確認してもらい、内容に誤りがなければ、署名・捺印をしてもらいます。
(3)被害者とされている社員が、逆に加害者である可能性もあるため、ヒアリングでは先入観を捨てて話を聞くことが求められます。
■被害者へのヒアリング
被害者とされる社員からは、主に以下の内容を聞き取る必要があります。
・具体的な加害行為
・当時の状況
・加害者との関係
・怪我の程度
・今後、加害者とどのような関係を築きたいかの希望(同じ部署で働きたくない、謝罪があるなら従前どおり一緒に働いてもよい等)
■加害者へのヒアリング
一方、加害者とされる社員からは、以下の内容を聞き取る必要があります。
・加害行為に及んだ当時の状況
・加害行為に至った理由
・自身の行為に対する反省の有無
・被害者への謝罪意向の有無
加害行為があったことが明らかにも関わらず、反省をしていない言動・態度が見られる場合には、その旨を記録しておくことも重要です。
コメント
JR東日本をめぐっては、「上司らから人事上の不利益を告げられ、懇親会で20回以上にわたり労働組合からの脱退を求められたパワハラがあった」として、社員1名への慰謝料の支払いを求める判決が2024年4月24日に東京高等裁判所で下されています。
そして、今度は、上司・部下間の暴行に起因しての労務紛争。男性社員と上司の双方が被害者と主張しているといいますが、裁判を通じた、真相解明が待たれます。
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