花王のアクティビストが社外取締役の選任などを株主提案/社外取締役とは
2025/01/30 商事法務, 総会対応, 会社法, メーカー

はじめに
花王は23日、アクティビストとして知られる香港投資ファンドから株主提案を受けたことを発表しました。社外取締役の選任などが提案されていたとのことです。今回は社外取締役とその要件などを見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、花王は3月下旬に予定している定時株主総会に関し、同社株主である投資ファンド「オアシス・マネジメント」から書面で株主提案を受けたとされます。その内容は、議題として社外取締役5名選任、社外取締役に対する報酬額の改訂、社外取締役に対する事後交付型株式報酬付与、社外取締役以外の取締役に対する株式報酬制度承認とのことです。社外取締役の候補とされる5名はすべて外国人とみられ、多国籍企業に長年勤務し、供給網に詳しい人や消費財関連企業で最高財務責任者を努めた経験のある人を含むとされております。この提案に対する同社取締役会の対応は決定次第発表するとのことです。
社外取締役とは
社外取締役とは、会社外部から選任された取締役を指します。会社とは利害関係のない公正な視点を持った者が選任され、企業のコーポレートガバナンスやコンプライアンス体制を監視・監督し不祥事や不正を防止することを任務としております。会社の業務の監査を行う点で監査役等と似た立場ではありますが、取締役の一員として経営陣の内部から統制することが期待されます。社外取締役の設置が義務付けられるのは、(1)特別取締役による決議に委ねる場合(会社法373条)、(2)監査等委員会設置会社(331条6項)、(3)指名委員会等設置会社(400条1項、3項)、(4)上場会社等(327条の2)となります。最後の上場会社等というのは令和元年改正で追加されたもので、監査役会設置会社であって有価証券報告書提出会社が該当することとなります。なお社外取締役を置かない場合の説明義務はこの改正から無くなりました。
社外取締役の要件
社外取締役の要件は会社法2条15号に詳細な規定が置かれております。これは平成26年改正で要件が厳格化されたものでありかなり複雑なものとなっております。具体的には、(1)当会社の代表取締役、業務執行取締役、執行役、支配人、使用人といったいわゆる「業務執行者等」でないこと、(2)過去10年間に当会社の業務執行者等でなかったこと、(3)過去10年間に当会社の取締役、会計参与、監査役であった者はその就任前10年間で業務執行者等でなかったこと、(4)子会社の業務執行者等でないこと、(5)過去10年間に子会社の業務執行者等でなかったこと、(6)過去10年間に子会社の取締役、会計参与、監査役であった者はその就任前10年間で業務執行者等でなかったこと、(7)親会社の取締役、執行役、支配人、使用人でないこと、(8)兄弟会社の業務執行者等でないこと、(9)当会社の取締役、執行役、支配人、使用人の配偶者および二親等内の親族でないこととなっております。
コーポレートガバナンス・コード
上記のように、上場会社であっても公開かつ大会社(監査役会設置会社)でない場合は社外取締役の設置は義務付けられておりません。しかし東証が定めるコーポレートガバナンス・コードでは上場会社に努力義務として、独立役員1名、独立社外取締役1名の確保を求めております。ここに言う独立社外取締役は会社法2条15号で定める社外取締役と同義であり、一般株主と利益相反が生じるおそれがない者と言われております。独立役員は会社法2条16号で定める社外監査役が含まれております。また、平成27公開のコーポレートガバナンス・コードでは独立社外取締役を少なくとも2名確保すべきとし、それをしない場合は理由説明が求められております。なお現在99%の上場企業が2名以上確保しているとされております。
コメント
本件で、花王は東証プライムに上場する公開会社で、監査役会設置会社となっております。そのため会社法上社外取締役の設置が義務付けられます。現在同社では3名の社外取締役と3名の社外監査役が選任されております。今回同社のアクティビストからさらに5名の社外取締役選任の議題が提案されております。3月の定時総会が注目されます。以上のように現在会社法では特別取締役の定めがある場合や監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、上場会社に社外取締役の設置が義務付けられております。しかし上でも触れたようにその要件はかなり複雑で人材確保は容易ではないと言われております。一般に社外取締役として就任する人の経歴は、弁護士や公認会計士などの法律の専門家や学者、元官公庁の人間、金融機関の人間、経営経験者が多いと言われております。それらも踏まえ、人材の開拓を進めていくことが重要と言えるでしょう。
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