電通グループ会社、コロナ事業で1億円超を過大請求
2025/01/29 契約法務, コンプライアンス, 行政対応, 行政法, IT

はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大に対応するためのシステム開発を厚生労働省から受注した、株式会社電通テック(現・株式会社電通プロモーションプラス)。しかし、人件費を水増しするなどし、約1.1億円の費用を過大に請求していたことが会計検査院の調べで明らかとなりました。厚生労働省は不正な請求だとして、返還を求めているということです。
厚労省からの事業で1億円超の水増し請求
会計検査院によりますと、厚生労働省は2020年5月、電通テックに対して、「新型コロナウイルス感染医療機関等情報支援システムの構築・運用」に係る事業を委託したといいます。
具体的な委託内容は、医療機関の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、医療機器やマスクなどの医療資材の確保状況などについて、医療機関が入力した情報を一元的に地方公共団体に提供するシステムの構築を行うと共に、システム構築後は、医療機関などからの問い合わせに対応するコールセンターの運用業務や医療機関等に対するライセンスの付与に係る業務を行うというものでした。
事業は、随意契約を締結した上で進められ、委託業務に対する報酬と業務に関連して発生した費用合わせて約8億6,000万円が電通テックに支払われたといいます。
しかし、2024年に会計検査院が調査を実施したところ、コールセンターの運営に係る人件費などで実際よりも多くの費用が請求されていたことが分かりました。
もともと、厚生労働省と電通テックは、随意契約の中で、「業務の一部を第三者に再委託した場合の人件費などは、実際に業務に要した額を費用として請求する」旨を取り決めていました。
こうした規定にしたがい、電通テックは別のグループ会社、株式会社電通カスタマーアクセスセンター(現・株式会社電通プロモーションエグゼ)に業務の一部を再委託していましたが、その際の費用に関し、勤務実態のないものを計上したほか、人件費単価に根拠のない金額を上乗せするなどして、約1億1,000万円分を過大に請求していたといいます。
会計検査院は「電通テックにおいて実績に基づき適正な費用を請求することについての認識が欠けていた」と指摘。また厚生労働省に対しても、電通テックから提出された請求書などの確認が十分でなかったとしています。
水増し請求とは
水増し請求とは、実際にかかった費用や料金よりも上乗せして請求し、差額分を横領する行為を指します。意図的に行われた場合には、着服した人物などに詐欺罪が成立します。
元請け会社と下請け会社の従業員同士が協力して行いキックバックを得るケースや、帳簿に虚偽の記載をするケース、従業員が乗っていないタクシー代を経費として精算し請求するなどのケースが確認されています。
水増し請求をした事業者のほか、共謀を行った事業者は、法的な責任を負う可能性があります。
【法的責任の例】
・詐欺罪、背任罪等の刑事上の責任
・不当利得に基づく返済義務
・不法行為に基づく損害賠償義務
そのため、万が一、社内で水増し請求が疑われる場合には、慎重に事実確認を行い、早期に適切に対処する必要があります。事実確認を行ううえで、集めるべき証拠の一例としては次のものが挙げられます。
・請求書、領収書
・会議の議事録
・関係者からの証言
・メール、社内チャットなどのメッセージ記録
・取引先との契約書
請求書は改ざんされているおそれがあるため、契約書やメールなどでのやりとりから判断される場合もあります。
また、書類データなどは、改ざんが簡単にできてしまうため、フォレンジック調査などを実施し、証拠の保全を行うことが重要です。
コメント
今回の厚生労働省の委託事業をめぐっては、電通テックが業務を再委託した電通カスタマーアクセスセンターが、国の契約ルールに反し、厚生労働省への届け出なく、さらに電通テックの子会社へ再々委託していたと報じられています。
グループ内での再委託の連鎖と水増し請求。これらが常態化していなかったか、さらなる調査が求められます。
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