セクハラ被害が労災に認定される!?
2011/06/26   労務法務, 労働法全般, その他

セクハラ被害が労災に認定される!?

厚生労働省は23日、セクハラによる精神疾患の労災認定基準を見直す方針を打ち出した。同省は現状、特別な事情がない限り、セクハラを原因とする精神疾患を労災とは認めていないが、今後はこれを改め、より容易に労災として認定していく方向だ。

精神疾患の労災認定

精神疾患の労災認定は、精神疾患の原因となった「仕事上のストレスの強さ」を3段階で評価したうえで、個々の事情を加味して判断されている。現状のストレス強度評価の具体例は以下である。

【ストレス強度「3」認定事例】
退職を強要された、経営に影響する重大なミスを犯した
【ストレス強度「2」認定事例】
左遷された、セクハラされた

厚生労働省では、セクハラに関しては、一律でストレス強度「2」と評価する運用を行ってきた。しかし、近年、セクハラの悪質事例が次々と露見していることから、このような悪質事例については最も強い「3」と評価するよう改める方針だ。

なお、ストレス強度「3」なら確実に労災認定されるわけではないのだが、「3」でないと認定されにくいというのが実情である。

今後、労災認定されそうなセクハラ

1.強姦(ごうかん)や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為が行われた場合
2.胸など身体への接触が継続した場合
3.接触は単発だが、会社に相談しても対応、改善されない場合
4.言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した場合

このように、様々なケースでセクハラが労災として認定されそうである。

雑感

厚労省によると、2010年度に各都道府県の労働局に寄せられた相談の過半数にあたる1万2000件程がセクハラに関するもので、11年連続最多を記録したとのことである。これに対し、2009年度に、セクハラによる精神疾患を理由として行われた労災申請は16件にとどまり、実際に労災認定されたものに至っては4件しかない。

「どうせ申請しても、労災認定はされないであろう」という絶望感から、セクハラによる精神疾患を理由とする労災申請に二の足を踏む者が多かったということだろうか。

今後は、セクハラの被害者が積極的に労災申請して行く流れが出来るものと予想される。その一方で、会社による労災隠しが増加するのではとも懸念される。セクハラによる労災認定がされると、①保険料が上がる場合、②会社の責任や体制を問われる場合、③保険料のごまかしがバレる場合があるからだ。

これだけセクハラ被害を訴える者が増えている中では、会社の抱えるリスクも大きい。必要なお金は支払うから労災申請はしないでくれと会社が被害者に頼むケースも増える可能性もある。厚生労働省による徹底した「労災隠し対策」が求められる。

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