介護保険法の改正と医療行為の限界
2011/06/23 法改正対応, 法改正, その他
介護保険法の改正
6月15日の参院本会議で改正介護保険法がで可決され、成立しました。
改正の要旨
高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとの趣旨で改正が行われました。
①定期巡回・随時対応型訪問介護看護等の新たなサービス類型の創設
(⇒24時間対応が可能な訪問看護)
②保険料率の増加の抑制のための財政安定化基金の取崩
③介護福祉士等によるたんの吸引等の実施等の措置を講じる
という点が改正の要旨です。
総評
今回の改正で、介護が必要な人も自分の住み慣れた地域で暮らせる態勢が整えられることが望まれます。ここでは、特に上記改正要旨のうち③たんの吸引等の実施等の措置について考えてみたいと思います。
従来から医療行為を医師資格を持たない介護士が行うことは禁じられています。(医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない。」)
例えば、インスリン注射や血糖値測定行為は医療行為であり介護士が行うことは違法とされます。
ただ、介護の実態としては、あるアンケートによると『介護職の9割が医療行為を経験したことがある』と回答したように、介護士と医療行為は非常に隣接し境界線が難しくなっているといえます。
医療行為を医師に限定する趣旨は、危険性の高い行為を医師に限定することで対象者の生命身体の安全を維持することにあると考えられます。そのため過度に医療行為の範囲を広げ身体への危険性がない行為まで介護士ができないとすることは有効適切な介護の妨げであり、法の趣旨にも合致しません。
従来はこの医療行為の範囲が広く介護士が行うことができる範囲が狭く、法制度として実態に合わず不自由なものとなっていた側面があります。今回の改正により、たんの吸引など介護士ができる行為が広がり有効な介護への前進といえると思います。
ただ、一方でたんの吸引も呼吸停止の危険を伴います。そのためもしもの事故が起こった場合の介護士の責任という点も懸念されます。今後はさらなる介護士のバックアップ体制も必要となってくるものと思われます。
関連コンテンツ
新着情報
- ニュース
- 五輪談合事件で指名停止中の電通・博報堂に、都が特命随意契約で事業発注2024.4.18
- 東京オリンピック・パラリンピックをめぐる談合事件で指名停止となっている広告大手の電通および博報...
- 弁護士
- 前田 敏洋弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 弁護士
- 淺田 祐実弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 業務効率化
- LegalForce公式資料ダウンロード
- まとめ
- 解雇の種類と手続き まとめ2024.3.4
- 解雇とは、会社が従業員との労働契約関係を一方的に破棄する行為をいいます。従業員にとっては職を...
- セミナー
- 原 武之弁護士
- 並木 亜沙子弁護士
- 【リアル】人事・労務管理(概要編)-法務担当者向け 法務基礎シリーズ-
- 2024/05/09
- 15:30~17:00
- 業務効率化
- Araxis Merge 資料請求ページ