労基法改正骨子案、14日以上連続勤務禁止・副業・割増賃金見直しへ
2024/11/18 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
厚生労働省の有識者研究会は11月12日、「14日以上の連続勤務を禁止する」などの法改正を検討すべきとする報告書骨子案を示しました。現在の労働基準法では48日間の連続勤務が可能となっています。
研究会は今年度内に報告書をまとめた後、労働政策審議会で詳細を議論する予定で、早ければ2026年に改正案の国会提出を目指すということです。
“最長48日間勤務可能”見直し検討へ
現在の労働基準法では、企業側は原則、労働者に対し、少なくとも週1回の休日を与えなければならないと定められています。ただし、これが難しい場合には4週間を通じて4日以上の休日を付与するという例外的な措置が認められています。
この措置は「4週4休制」とも呼ばれ、特定の4週間に4日の休日を付与すればよいことになっています。そのため、休日を期間の前後にすることで法律上は最長で48日間勤務させることができるのです(最初の4週の1週目でまず4日休んだあと、24日間連続で勤務。その次の4週の開始から24日間連続勤務し、最後4日間を休むケース)。
ちなみに、「4週4休制」を実施するにあたり、“4週”の起算日を就業規則などに定めておかなければなりません。また、法定休日に労働させた際には、休日労働への35%以上の割増賃金の支払い義務が発生することになっています。
加えて、時間外労働の時間数や休日労働の日数は、労働者側との間で締結した労使協定である36協定の規定を遵守する必要があります。36協定の上限を超えて時間外労働や休日労働をさせている場合、労働基準法違反となります。
労働基準法に違反した場合には、労働基準監督署から行政指導の対象となるほか、刑事罰が科される可能性があります。
今回、研究会が連続勤務の禁止について法改正の検討を進める背景には、「2週間以上の連続勤務」が労災の認定基準の1つになっていることが挙げられます。
実際、「2週間以上の連続勤務」が心身に与える影響は大きく、1カ月に120時間以上の時間外労働を行ったケースよりもストレス度が高くなるという調査結果もあります。
このような背景もあり、研究会は11月12日、過重労働への対策の一環として「労働者に14日以上の連続勤務をさせてはならない」とする法改正を検討すべきという案を会合で示しました。
一方、時間外割増賃金の制度見直しで副業・兼業の促進も狙う
研究会が示した骨子案では、連続勤務の見直し案の他にも、本業先と副業先の労働時間を通算して時間外割増賃金を支払う現行制度の見直しを検討するとの内容が含まれています。
現在の労働基準法では、割増賃金に関し、「使用者は労働者を1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働かせる場合は、36協定を結び、割増賃金を支払う必要がある」旨定めています。
そして、労働者が副業をしている場合には、本業先・副業先の使用者双方が1日単位で労働時間を管理することになっており、それぞれの労働時間を合算して計算する仕組みになっています。
こうした複雑な仕組みが、副業や兼業の促進を阻んでいるとする声もあがっており、研究会では、労働時間の合算は維持しつつ(労働者の健康確保のため)、割増賃金の支払いについては適用しない制度の検討を進めるよう提案しています。
コメント
今回、研究会が発表した骨子案については、今後、具体的な内容が議論され、早ければ2026年に改正案が提出される見通しとのことです。
まだ少し先の話ではありますが、世の中の大きな流れとして、(1)労働者の健康確保、(2)副業の促進があるのは間違いありません。
自社において、どのような働き方を実現すべきか、この機会に制度面の見直しを検討するのもよいかもしれません。
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