「お菓子のきくや」で知られる新潟の老舗菓子メーカーが倒産、特別清算開始命令
2024/11/15 総会対応, 債権回収・与信管理, 事業再生・倒産, 会社法, 破産法, 食料品メーカー, 小売

はじめに
新潟県にある老舗の菓子製造会社、株式会社シルクロードが10月下旬に新潟地方裁判所から特別清算開始命令を受けました。負債総額は約4億円に上ると報じられています。
老舗菓子店 赤字続き特別清算手続きへ
シルクロードは1939年に喜久屋菓子店として個人創業しています。冠婚葬祭向けの菓子折りやマドレーヌ・ガトーショコラ・最中・どら焼きなどの小売り用菓子を製造。1964年6月に法人化し(以下、「旧きくや」)、「お菓子のきくや」の名称で知られていました。
新潟市内に複数の小売店舗があるほか、他企業からの依頼を受けてのOEM製造の受注も順調で、2006年5月期には年間の売上高が9億円を超えていたといいます。
しかし、近年は業績が悪化。背景には2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大などにより冠婚葬祭の儀式が簡素化され、菓子折りの受注が激減したことが挙げられています。
その影響からか、2021年5月期の年間売上高は約4億円に留まり、赤字となっていたそうです。
コロナ禍後は売上がやや改善したものの、原材料価格の高騰などにより苦しい経営を迫られていました。加えて、新設した工場の借入金の返済がのしかかっていたといいます。
実際、2023年5月期には3,000万円超の赤字を計上し、債務超過額も2億3,963万円に膨らんでいました。
こうした状況を受け、今年5月13日、東京都荒川区に本社を置くギフトの総合商社、株式会社三英商会がスポンサーとなって新たに株式会社きくや(以下、「新きくや」)を設立。
5月30日には、旧きくやの商号が「株式会社シルクロード」に変更され、6月21日の株主総会の決議で解散。10月24日に特別清算開始決定を受けたということです。
なお、新きくやは、旧きくや(シルクロード)から事業を承継し、新体制下で「お菓子のきくや」の営業を続けているといいます。
特別清算とは
「特別清算」とは、解散して債務清算中の株式会社が利用できる倒産処理の方法です。会社法を根拠として行うため、対象となるのは株式会社のみとなります。
破産手続と比べると手続きが比較的簡易のため、より迅速に会社の清算を行うことができるのが特徴と言えます。
一方、別の清算手続である「破産」は破産法に基づいており、法人の種類に関わらず利用することができます。ただし手続きが厳格となっています。
特別清算の手続きを行えるケースとしては以下が挙げられます。
・清算中の会社に、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事業がある場合
・債務超過の疑いがある
・特別清算開始障害事由(会社法514条)がないこと
(会社法510条、514条)
ちなみに、特別清算を申し立てるためには、株主総会の特別決議により会社の解散決議を行ったうえで、清算人選任の決議を行わなければなりません。また、債権者への弁済にあたり、協定または和解が必要になります。そのため、場合によっては、破産(株主や債権者の同意なく申立人単独で可能)よりも手続き開始までの道のりが困難となるケースがあります。
従業員への影響
では、特別清算が行われた場合、従業員へはどのような影響があるのでしょうか。
特別清算では、会社が解散し、特別清算手続きが終わると法人格が消滅することになります。そのため、従業員との雇用契約もその時点で消滅します。
ただ一般的には、会社が解散する前に、従業員との雇用契約を終了させるケースが多いとされています。
なお、賃金や退職金などの労働債権については、協定債権から除外されており、
優先債権として適宜弁済を受けることができます。
コメント
地産の食材を用い、昔ながらの製法を守り新潟ならではのお菓子を作り続けてきた「お菓子のきくや」。新潟では「きくや」と聞くと、ほとんどの人が『お菓子のきくや』を思い浮かべるほど、地元で長く愛されてきた菓子店だといいます。
そんな中で行われた、旧きくやの特別清算。特別清算は、業績不振の株式会社において、“破産”というショッキングな響きによる風評被害を避けつつ、優良事業を社外に切り出して、残存する資産と負債をスピーディーに清算処理するために用いられることがあります。新きくやで「お菓子のきくや」の営業は継続されているということで、新潟県民にとっては一安心といったところでしょうか。
帝国データバンクによると、今年10月の企業倒産件数は925件で、30ヶ月連続で前年同月を上回っているといいます。特別清算に破産に民事再生。業績不振時にいずれの手続きを選択するか、多くの企業が困難な選択を迫られています。
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