洋菓子店「シェ・タニ」が賞味期限を改ざん、食品表示法の規制について
2024/10/17 コンプライアンス, 行政対応, 食料品メーカー

はじめに
熊本市の洋菓子店「シェ・タニ」が売れ残った商品の賞味期限を改ざんして販売していたことがわかりました。賞味期限のシールを約1年間にわたって張り替えていたとのことです。今回は食品表示法による規制について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、熊本市の洋菓子店「シェ・タニ」は、バレンタインデー向けに販売したチョコレート菓子「アマンドショコラ」が大量に売れ残ったことから、賞味期限のシールを張り替えるなどして約1年間にわたって7店舗で販売していたとされます。店では本来、第三者機関の検査に基づいて、すべての商品の賞味期限を設定していたが、「アマンドショコラ」は期間限定商品のため、類似商品を参考に期限を伸ばしていたとのことです。これらの事実は今年9月に元従業員が熊本市保健所に公益通報したことで発覚し、保健所が調査を進めているとされます。
食品偽装と規制
小売・卸売、飲食店などで商品を提供する際に、生産地や原材料、消費期限、賞味期限などについて、実際とは異なった表示を行うことを一般に食品偽装と言います。外国産肉を国産と偽ったり、種類の違うエビを芝エビと表示するといった例が報告されております。このように産地偽装や種類の偽装が多く行われますが、消費期限や賞味期限を偽装する場合もしばしば見られます。食品の表示に関する規定は、かつては食品衛生法、JAS法、健康増進法に分散しておりました。しかしその後、国際規格との整合性や統一的な表示制度の構築を図るため、平成15年にこれらの法律を統合した食品表示法が成立しました。これにより国民の健康の保護と増進、食品の生産と流通の円滑化や消費者の需要に即した食品の生産の振興が期待されます。
食品表示基準と賞味期限・消費期限
食品表示法4条1項1号、2号では、食品の名称、アレルゲン、保存方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量と熱量、原産地その他食品関連事業者が表示すべき事項と遵守すべき事項を内閣総理大臣が食品表示基準として策定しなければならないとしております。そして食品表示基準によりますと、「消費期限」とは、定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日とされております(2条7号)。また「賞味期限」とは、定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日を言うとされます(同8号)。噛み砕くと、消費期限とは期限を過ぎたら食べない方が良い期限、賞味期限はおいしく食べることができる期限であり、過ぎても食べられないわけではない期限と言われております。そして消費期限は年月日で表示し、賞味期限は3ヶ月を超えるものは年月で、3ヶ月位内のものは年月日での表示が求められます。
食品表示等に関する違反
食品表示法では、表示事項が表示されていない食品を販売したり、遵守事項を遵守しない事業者に対しては行政措置として指示や措置命令、回収命令、一部停止命令、公表、立入検査などが行われることがあります(6条~8条)。また適格消費者団体がこのような事業者に対し、差止請求を行うことができる旨も規定されております(11条)。そして罰則も置かれており、アレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかなどの安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令で定める事項については、措置命令に違反した場合に3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっております(17条)。さらに原産地についての虚偽表示に対しては、行政処分を経ずに2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります(19条)。またこれらは法人についても両罰規定が定められており、3億円以下の罰金等が科されます(22条)。
コメント
本件で「シェ・タニ」は売れ残った商品の「賞味期限」のシールを張り替えて約1年にわたって販売していたとされます。これらが事実であった場合は適切に表示事項を表示していなかったとして、食品表示法に違反する可能性があると言えます。同店は「意図的な改ざんではないが、改ざんと言われればそうかもしれない。今後は誤解を招く行為がないよう改善に務める」としております。以上のように現行の食品表示法および食品表示基準では食品の販売に際して、詳細な表示項目を定めております。表示事項によっては行政処分、罰則の対象となっており、企業名の公表もなされることとなります。どのような表示が義務付けられているか、また違反に対してどのようなペナルティがあるかを社内で周知、徹底していくことが重要と言えるでしょう。
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