「きのこの山」デザインのイヤホン類似品の輸入差し止め、明治が知財保護強化
2024/10/02 知財・ライセンス, 商標法, 食料品メーカー

はじめに
人気チョコレート菓子「きのこの山」に関する模倣品が相次いだことを受けて、明治ホールディングスの食品子会社、株式会社明治は9月24日、立体商標の権利を初めて行使したと発表しました。
今回の明治の商標権行使の背景には相次ぐ模倣品被害があります。具体的には、同社が発売した“きのこの山”デザインのイヤホンの類似品が発売開始前から出回ったほか、きのこの山そっくりの形をしたチョコレート菓子が発売されるなどしていました。これらの被害を受け、明治は知的財産の保護活動を強化する方針を打ち立てています。
きのこの山模倣品、商標権侵害の被害相次ぐ
きのこの山は明治が発売するチョコレートスナックです。1975年の誕生から人気を誇り、同社が発売する「たけのこの里」とともに消費者から愛されてきました。
明治は、チョコレートスナックにとどまらず、きのこの山関連グッズを発売しています。その一つがきのこの山の形を模したイヤホン(以下、「きのこの山イヤホン」)です。音楽や通話ができるだけでなく、翻訳機能もついている多機能イヤホンで、発売前から大きな話題を呼びました。
きのこの山イヤホンは今年3月26日に3500台限定で販売され、即日完売する大人気商品となっています。
しかし、きのこの山イヤホンが発売された前月、すでに模倣品が出回っていたということです。模倣品は正規品とデザインが異なる上、証明書や翻訳機能もついていないなどの違いがあります。
模倣品が出回っていることを確認した明治は、3月上旬、正規品はまだ発売開始されておらず、模倣品を購入しないよう消費者に注意喚起しました。
その後、明治による調査の結果、中国で模倣品が製造されていることが判明します。
ちなみに、“きのこの山”に関しては、その形自体が2018年に立体商標として認められている(第6031305号)ほか、「きのこの山」という文字も、明治が1978年に文字商標として登録しています (「きのこの山」第1330075号)。
明治側はこれらの商標権侵害を主張し、税関に対し、商標権に基づく輸入差止申立てを行いました。申立ては6月14日に受理され、模倣品の輸入は税関にて阻止されたとのことです。
チョコレート菓子の模倣品も
“きのこの山”については、イヤホンのほかにも、他社がそっくりなチョコレート菓子を発売したことも問題となりました。「チョコきのこ」という、きのこの山にそっくりな形のお菓子を、埼玉県の菓子メーカーが製造販売していたものです。
明治は菓子メーカーに対し権利侵害を主張。今年3月、菓子メーカーから「チョコきのこ」の製造・販売を中止するという合意を得たということです。
立体商標とは?
“きのこの山”が取得した立体商標とは、名称の通り“立体的”な形状を商標として登録し保護するものです。
・商品
・商品の包装
・広告自体の形状、広告等
・店舗(外観・内装)
などを登録することができます。
例えば、有名なところでは、不二家のペコちゃん人形(登録4157614)が登録されています。
そのほかにも、ウィスキーボトルや、ポテトチップスを入れる筒状の容器なども登録が認められています。
ぺこちゃん人形を見たら、不二家を想起するように、特定の人形や容器の形などがブランドの象徴になることがあります。そのため、こうした立体的形状も商標権の一種として法的に保護されています。
コメント
今や国民食ともなった“きのこの山”。その誕生までには、形状・味・食べやすさにこだわった何百もの試作が重ねられ、商品名やパッケージデザインについても慎重な議論が積み重ねられたといいます。
それでも、明治はこれまで、“きのこの山”の商品コンセプトである「郷愁や自然、人間のやさしさ」といった柔らかいブランドイメージを阻害しないため、商標権侵害の訴訟提起を行わないようにしていました。
しかし近年、「ブランド保護のため商標権を行使すること」が社会的に認知され始めたこともあり、今後は顕著な模倣行為が確認された場合には損害賠償請求などの対応も検討する方針だということです。
長く愛されるブランドを育てるうえで欠かせない商標。世界各地で模倣品被害が拡大する中、改めてその活用を考える必要があります。
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