農地法違反の太陽光事業者20社交付金停止に
2024/08/15   コンプライアンス, 行政対応, エネルギー関連

はじめに


経済産業省は8月5日、農地法違反(農地転用許可未取得)などが確認された一部の太陽光発電事業者に対して、交付金の支払いを一時停止すると発表しました。停止の対象となったのは、固定価格買い取り制度(FIT)の交付金などです。

農地を別の用地に転用する「農地転用」には、行政への許可申請や届出が必要です。違反すれば刑事罰が科される可能性もあります。

 

太陽光事業342件、20事業者が違反か

経済産業省・資源エネルギー庁は8月5日、農地法違反などが確認されたソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)事業に対して、農林水産省と連携して、FIT(電力会社による固定価格での買取制度)、FIP(再生エネルギーの売電価格に対し一定のプレミアムを上乗せする制度)の交付金の一時停止措置を実施したと発表しました。

ソーラーシェアリングとは、農地に支柱等を立て、営農を継続しながら上部空間に太陽光発電設備を設置することにより、農業と発電を両⽴する仕組みです。支柱の基礎部分については、農業以外の用途での使用となるため一時転用許可が必要となります。
また、一時転用許可を取得するには、「下部の農地での営農の適切な継続が確実なこと」等の要件を満たす必要があります。

今回、補助金の一時停止措置を受けたソーラーシェアリング事業は342件、20事業者に上ります。違反として認められたのは以下の内容です。

①下部農地での営農が適切に継続されていない又は一時転用期間満了後も設備が撤去されないとして、農地転用許可権者から是正勧告や原状回復命令が出され違反転用状態のもの(15件・6事業者)

②FIT認定後3年以内に農地転用許可を受けることが要件とされている事案について、期間内に農地転用許可の取得が行われず、FITの認定要件を欠いているもの(327件・14事業者)

交付金の一時停止措置は2024年4月に施行された改正再エネ特措法で新設されました。関係法令の違反事業者らに対して、早期の是正を促すことが目的です。
一時停止された交付金については、「違反が解消されず認定を取り消された場合、国が徴収できる」とする措置が設けられています。

今年4月2日、森林法の違反状態が明らかな太陽光発電事業9件に対し、初の交付金一次停止措置が実施されましたが、今回がソーラーシェアリング事業に対しての初めての措置となりました。

経済産業省は、違反状態が解消されれば停止していた期間の交付金を支払うということです。

 

農地転用について

耕作の用に供されている土地、いわゆる「農地」。この「農地」への建物建設や、太陽光発電設備の設置、駐車場・資材置場としての利用など、「農地」を農業以外の目的に利用(農地転用)する場合、農地法に基づく許可取得や届出が必要となります(農地法第4条、5条)。

■市街化区域の農地を転用する場合
市街化を推進する地域である「市街化区域」の農地を転用する場合には、各市町村の農業委員会への届出を行い、受理通知書の交付を受けることで農地転用が可能となります。
 
■市街化調整区域の農地を転用する場合
市街化を抑制する地域である「市街化調整区域」の農地を転用する場合、原則として、農業委員会を経由しての許可申請が必要です。申請後、都道府県知事からの「許可」を受けることで農地転用が可能となります。
※対象の農地が4ヘクタールを超える場合は、農林水産大臣との協議も必要。


しかし、一部事業者などにおいて、許可取得や届出がないまま農地転用を行う「違反転用」が散見されています。
違反転用が認められると、3年以下の懲役または300万円以下、法人は1億円以下の罰金を科せられる可能性があります。

この罰則の対象となるのは、
①許可を得ることなく農地を転用した者や許可の条件に違反して転用した者(違反転用者) 
②違反転用者から転用事業を請負った者やその下請事業者

となっています。

建設事業者や建設資材の運搬業者なども違反転用事業に加担することにより罰則の対象になり得ます。農地転用の業務を請け負う際には、農地法上、必要な手続きがとられているか確認することが大切です。

 

コメント


令和4年4月5日に農林水産省が行った発表によると、令和2年中に違反転用状態だったものの総数は9,588件。その転用用途としては、住宅用地2,094件、資材置場1,869件、車庫駐車場1,587件、農業関係施設997件だったということです。

意図せず農地法違反をしているケースもあるということで、建設行為などを行う前には必ず「地目」を不動産登記で確かめる必要があります。

 

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