三菱UFJ銀行が系列証券会社と顧客情報を無断共有か?監視委が勧告検討
2024/06/11 金融法務, コンプライアンス, 情報セキュリティ, 金融商品取引法, 金融・証券・保険

はじめに
証券取引等監視委員会は、三菱UFJ銀行と系列証券会社2社に対し、「金融商品取引法違反を理由に行政処分を課すよう」、金融庁へ勧告する方向で検討を始めたと、6月7日に報道されました。
三菱UFJ銀行は融資先企業に、グループ傘下の証券会社との取引を勧誘したほか、顧客の内部情報を無断で証券会社と共有したなどの疑いが持たれています。
同じ金融業界では、2022年に三井住友フィナンシャルグループ傘下の銀行と証券会社が、相場操縦事件後に金融庁から行政処分を受けましたが、事件後の検査で、同じ傘下の銀行と証券会社の間で顧客の非公開情報が無断で共有され、営業活動に使われたことが判明しています。
改めて、業界をあげた機密情報・個人情報の管理徹底が求められています。
非公開情報を無断で共有
勧告の対象として検討されているのは、三菱UFJフィナンシャル・グループの「株式会社三菱UFJ銀行」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社」、「モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社」の3社です。
そのうち、三菱UFJ銀行は、融資先の企業にグループ内の証券会社との有価証券取引を勧誘した疑いが持たれています。
また、証券会社2社は、非公開情報を同意を得ずに、銀行側から取得していたと言われています。証券会社が得た非公開情報は、複数の取引先企業の経営戦略に関する内容で、2021年ごろに日系企業が外国企業と事業統合した案件などに関連して情報共有が行われたとみられています。
金融商品取引法およびその関連法令では、銀行などの金融機関が有価証券の取引の勧誘などを行うことが禁止されています。
さらに、グループ内の銀行と証券会社の間で、顧客の同意なく、顧客情報や非公開情報を共有することが制限されています(「ファイアウォール規制」)。
こうした規制が設けられている背景には、「顧客保護」の目的があります。企業へ融資を行う強い立場にある銀行が、その優越的地位を乱用したり、顧客の意思に反して顧客情報の共有を行うことは適当ではないためです。
証券取引等監視委員会は、3社に行政処分を行うよう金融庁に勧告する方向で検討しており、6月10日の週にも勧告が出されるとみられています。
勧告が出された場合、金融庁は月内にも業務改善命令などの行政処分を出す調整を進めると報じられています。
2022年にはSMBCも非公開情報を共有
2022年には、三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBC興証券株式会社と株式会社三井住友銀行の間でも非公開情報の共有が発覚しています。
SMBC日興の元副社長らが不正に株価維持を図ったなどとして有罪判決があった相場操縦事件を受けて、監査委員会が検査を実施。その際、別件で、SMBC日興証券が三井住友銀行との間で顧客の非公開情報を無断で共有し営業活動に使っていたことなどが発覚しました(以下、「銀証ファイアーウォール規制違反事案」)。そのため、金融庁は、2022年10月7日、相場操縦事案とは別に、銀証ファイアーウォール規制違反事案についても、SMBC日興証券に業務改善命令を出し、コンプライアンス意識の醸成等を含む、実効性のある業務改善計画の策定と実施を求めました。
また、三井住友銀行及び三井住友フィナンシャルグループに対しても、報告徴求命令を出し、銀証ファイアーウォール規制違反事案についての、原因分析と実効性ある改善対応策の書面での報告を求めています。
三井住友フィナンシャルグループは、報告書の中で、「情報管理」の徹底が必要だと強調しました。
また、「銀証連携ビジネスに関する不十分なリスク認識や、顧客情報管理ルール等の態勢整備不足、牽制・モニタリング機能の発揮不足、及び法令遵守意識・規律意識の徹底に課題があった」として、
① 個別オプトアウトに関するルール整備等
② 事後モニタリングの拡充・強化
③ 法人関係情報管理の厳格化
を徹底するとしています。
相場操縦事案・銀証ファイアーウォール規制違反事案を受けた対応(三井住友フィナンシャルグループ)
コメント
金融業界では、近年の顧客ニーズの多様化・高度化を受け、自社のみならず、グループ各社の提供する多彩な商品・サービスを駆使して、顧客のニーズに総合的に応えていきたいという考えが強まっているといいます。
しかし、金融業界に限らず、顧客や取引先企業の情報を許可なくグループ会社や子会社などと共有することは、顧客を欺く行為になってしまいます。
企業は利益相反の防止や、公正な競争の確保などをした上で、経営を続けていく必要があります。
情報管理への意識を高めつつ、管理体制の見直しを定期的に行うことが重要です。
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