消費者庁が英会話NOVAの「入会金0円」で措置命令、キャンペーンの注意点
2025/10/20   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, サービス

はじめに

英会話スクール「NOVA」の運営会社が、生徒募集の広告で不当表示をしていたとして消費者庁が17日、景表法に基づく措置命令を出していたことがわかりました。「入会金0円」を繰り返していたとのことです。
今回はキャンペーンや期間限定セールの景表法上の注意点を見ていきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、「NOVAランゲージカンパニー」(東京)は、2024年9月から今年4月にかけて自社HPに載せた一部のコースの生徒募集広告で「一般2万2千円、KIDS1万1千円」の入会金(税込み)がキャンペーン期間限定で「0円」または半額になると表示していたとされます。

しかし、実際には同様のキャンペーンを毎月繰り返しており、2024年8月までさかのぼっても通常の入会金を支払わせていた実績は確認されなかったとのことです。

これに対し消費者庁は、通常よりも安いと誤解させる不当表示に該当すると判断し、措置命令を出しました。

 

有利誤認表示とは

景品表示法5条2号によりますと、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」を有利誤認表示として禁止しています。

つまり、商品やサービスの価格などについて、実際よりも、または他社と比較して著しく有利であると一般消費者に誤認される表示ということです。

なお、5条1号では「優良誤認表示」が規定されていますが、こちらは「価格その他の取引条件」ではなく「品質や性能」に関して誤認させることを禁止しています。

 

有利誤認表示の具体例

有利誤認表示の具体例としては、まず二重価格表示があります。これは以前にも取り上げましたが、商品等の販売価格を表示する際にそれよりも高い参考価格等を併記することで、消費者に格別安くなっているかのように見せるというものです。

実際に措置命令を受けた例として、価格1000円の商品に参考価格として9700円が併記されていたところ、その参考価格では販売された実態は無く、商品管理の便宜上定められていたものに過ぎないという事例があります。

次に多いのが期間限定などのキャンペーン表示です。これは「期間限定!入会金無料!」などと表示して消費者を誘引する表示を指します。実際の例では、期間限定で全講座1万円割引と表示されていたものの、実際にはそれ以外のほとんどの期間で同じ表示がなされていたというものです。

それ以外にも、数量限定で割引を表示していたり、競合店の平均価格より値引きすると表示しながらも、平均価格自体を高く設定していたという例が挙げられています。

 

セールや割引キャンペーンの注意点

上記のように、期間限定での割引やセールのキャンペーン、また「通常価格」や「参考価格」を表示した広告は、場合によっては有利誤認表示に該当する可能性があります。

まず、二重価格表示について、公取委のガイドラインによりますと過去の販売価格を比較対象価格として表示する場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」である場合は問題ないとされています。この相当期間とは必ずしも連続した期間でなくとも、断続的にセールが実施されておれば全体として期間が評価されます。

そして、販売されていたと言えるためには事業者が通常の販売活動で販売していたことが求められ、実際に消費者に購入されていたことまでは不要とされています。

また、期間限定のキャンペーンの場合、その期間を何度も延長したりするとそれが常態であるように見え、実際には割引を行っていないように判断されるリスクがあると言えます。再度キャンペーンを行う場合でも、一旦期間を開けて通常価格での販売を実施する必要があると考えられます。

 

コメント

本件でNOVAは、期間限定で入会金が0円または半額になると自社HPで表示していたとされます。しかし、実際には通常の入会金を支払わせていた実態が確認されず、消費者庁は有利誤認表示に当たるとして措置命令を出しました。

期間限定のキャンペーンなどを行う場合には、実際に通常の価格や入会金で販売されていたことが必要です。また、ほんの短期間だけでの販売も同様に比較対象価格としては不適格と判断される可能性があります。

さらに、期間限定のキャンペーンを何度も繰り返す場合も、やはり有利誤認表示と判断されるリスクが高いと言えます。これらを踏まえて、自社のHP等での価格表示などを見直し、実際にその価格で販売を行っていたのか、またどの程度の期間販売されていたのかを確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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