WeWork Japanの再生手続きが廃止、民事再生の手続きについて
2024/04/08 商事法務, 会社法, 破産法

はじめに
2月1日に東京地裁に民事再生法適用の申請をしていた「WeWork Japan合同会社(港区)」。4月1日にソフトバンク100%子会社のWWJ株式会社へのすべての事業および資金の移管が完了したことにともない、WeWork Japan合同会社を再生する必要性が無くなったため、同社の再生手続きが廃止されていたことがわかりました。民事再生法191条1号の事由によるとのことです。今回は民事再生法の手続きを見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、起業家向けのコワーキングスペースを提供する事業を米国を中心に世界39カ国で展開するWeWorkは日本においても東京を中心に全国の主要都市で約40の拠点を出店し、2022年12月期には約260億円を売り上げたとされます。しかし米国のWeWork社は2019年以降は巨額の赤字を計上しており、さらに新型コロナウイルスの影響を受け2023年11月には連邦破産法の適用を申請していたとのことです。同社日本法人ではソフトバンクの100%子会社WWJへ吸収分割する形で事業を移管する計画を立て、今年2月1日に東京地裁に民事再生法適用の申請をしておりました。
民事再生とは
民事再生とは、経済的な窮地にある債務者が、債権者の多数の同意を得ることにより事業や経済生活の再生を図るための法的手続きを言うとされます。経済的に破綻した債務者の事業活動を停止して、管財人のもとで債務者の財産を解体し、債務を精算する生産型の破産手続きとは異なり、民事再生はあくまでも事業を維持・継続しつつ再生を図る再建型の手続きと言えます。また同じ再建型の手続きとして会社更生手続きがあります。民事再生は会社など法人だけでなく個人も利用が可能ですが会社更生は株式会社に限られます。また民事再生では原則として現経営陣がそのまま続投しますが、会社更生では原則として現経営陣は退陣し、更生管財人が手続きを進めることとなる点が大きな違いと言えます。このように会社の経営が窮地に陥った場合は破産、民事再生、会社更生といった手続きが用意されております。
民事再生の手続き
民事再生手続きの流れとしてはまず、債務者等が裁判所に再生手続開始の申立を行うことから始まります。実際には同時に弁済禁止の保全処分や監督委員の選任なども行われ、申立から2週間程度で再生手続開始決定がなされます。このとき再生計画案の作成や可決の見込み、再生計画の認可の見込みがないことが明らかな場合は申立が棄却されることとなります。債権者が再生手続に参加するには裁判所が定める期間内に債権届け出を行うことが必要です。申立を行った再生会社は裁判所に財産価額の評定や財産状況の報告をし、届け出があった債権の認否を行い裁判所に提出します。その後再生会社は再生計画案を作成し裁判所に提出します。この再生計画案は債権者集会の決議を経て認可を受けることとなります。ここでの決議要件は議決権者の頭数での過半数と債権額での議決権の2分の1以上の同意を要します。再生計画案が認可されたらそれに基づいて弁済等が始まります。監督委員は3年間、計画の遂行を監督します。
民事再生手続の廃止
民事再生法では民事再生手続きが廃止される場合が挙げられております。まず(1)決議に付するに足りる計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき、(2)裁判所の定めた期間内に再生計画案の提出がないとき、または提出があっても決議に付するに足りないものであるとき、(3)再生計画案が否決されたときとなっております(191条1号~3号)。これらの事由がある場合はそのまま民事再生手続きを進めても債権者などの利害関係人に再生がまだ可能だと誤信させ損害を拡大させるなど無駄を強いることとなるため裁判所は民事再生手続は廃止する決定を行います。そして債務者に破産の原因事実があると認めるときは裁判所は職権で破産手続きに移行させることとなります。またこれら以外にも債務完済不能の場合や再生債務者の義務違反の場合も廃止事由に該当すると言われております。
コメント
4月2日に決定された、民事再生法191条1号の事由によるWeWork Japan合同会社の再生手続きの廃止。上述したように、1号は「決議に付するに足りる再生計画案の作成見込みがないことが明らかである場合」に適用されますが、WWJ株式会社によると、今回、4月1日にWWJ株式会社へWeWork Japanにおける全事業および資金の移管完了に伴い、WeWork Japan合同会社の再生の必要性がなくなったことが廃止決定の理由とのことです。
今後、WeWork Japan合同会社は清算に向けて手続きを進める予定とのことですが、従前の事業はWWJ株式会社の運営のもと、変わらず継続・発展させていくといいます。
民事再生をはじめとする「法的再生」に「私的再生」。経営再建には様々な選択肢があります。自社の財産状況や事業状況を慎重に評価して適切な選択肢を選ぶことが重要と言えるでしょう。
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