ネッツトヨタ富山、板金塗装修理1126台分で不正請求
2024/01/09 コンプライアンス, 危機管理, 民法・商法, 刑事法, 自動車

はじめに
自動車販売店の「ネッツトヨタ富山」は、12月22日、1126台におよぶ板金塗装の修理費を過大請求していたと発表しました。
全11店舗で受注した板金塗装の約2割で不正請求が行われたとのことで、会社側は顧客に対して差額分の返金や、再塗装などの対応をとるとしています。
顧客への過大請求 数千万円か
ネッツトヨタ富山の不正発覚のきっかけは、昨年10月に行われた外部からの情報提供でした。これを受け、会社側が社内調査を行ったところ、膨大な数の不正請求が判明しました。不正の内容は以下のとおりです。
①塗装作業において、油性塗料を使ったにもかかわらず、より高額な水性塗料分の金額を請求
②塗装表面のクリア塗装について、高性能クリア塗装をするべきところ、通常のクリア塗装を行う
ネッツトヨタ富山では、2021年9月~2023年10月にかけて、5899台分の板金塗装修理を行ったそうですが、その約2割にあたる1126台で不正請求が行われていたとのことです。
また、2021年8月以前の施工についても過大請求が行われた可能性があるとしており、ネッツトヨタ富山は顧客に対して、心当たりがある場合には問い合わせるよう呼びかけています。
会社は、今回の不正が発生した要因として、塗装種類の不十分な作業指示と確認体制の不備を挙げています。その結果、実際の作業者に塗装種類の情報が正確に伝わらず、見積りと作業内容に違いが生じ、またそのことに請求段階で気づけなかったといいます。
ちなみに、ネッツトヨタ富山側は、今回の不正は運用上のミスであり、故意ではないとしています。
なお、報道によりますと、会社が顧客から過大に受け取った金額は、少なくとも1000万円を超えると見られており、現在、1台ずつ返金額を調査し、随時返金を行っているということです。既に調査を終了した数十台の返金額の平均は、1台あたり1万7000円ほどになっているといいます。
誤請求が起こる要因
実際よりも多く請求してしまう過剰請求や、少なく請求する過少請求など、誤請求はどうして起きてしまうのでしょうか。典型例として以下の3つのパターンが考えられます。
(1)手作業や目視によるミス
請求書の作成時に、金額や入力箇所を間違えて入力してしまうパターン。特に、一度に何通もの請求書を発行する場合に起きやすいとされています。
(2)料金の算定ミス
料金体系が複数種類ある場合や、キャンペーンなどで一時的に料金の算定方法が変わった場合、決済手段が多様(クレジット払い・銀行振り込み・ポイント払い・電子マネー払いetc.)で算定作業が複雑化している場合などで、料金の算定を誤ってしまうパターン。
(3)コミュニケーション不良によるミス
受注担当と作業担当、請求担当間のコミュニケーションが不十分な場合などに、誤った作業内容に基づいて請求を行ってしまうパターン。
今回のネッツトヨタ富山のケースは(3)のパターンに該当するといえます。
過大請求に基づく入金への対応
自社が誤って過大請求を行った場合、顧客が入金する前に誤りに気づくことができればよいのですが、入金があってから気づくケースも少なくありません。その場合、入金されたお金への対応によっては刑事罰に問われるおそれがあります。
刑事判例では、誤振込を受けた受取人は、自己の口座に誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があるとされています。そのため、誤振込があることを知った受取人が、その事実を秘して預金の払い戻しを請求することは詐欺罪の欺罔行為に当たり、そのまま払戻しを受けた場合は1項詐欺罪が成立するといわれています(平成15年3月12日 最高裁判決)。
刑法第246条1項
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民法上、不当利得返還請求権の時効は、権利行使できるときから10年とされています(2020年4月以降に発生した権利については、権利行使できることを知ったときから5年経過でも消滅)。そのため、仮にネッツトヨタ富山の過大請求が複数年にわたって行われていた場合、最大で10年間分を遡って返還する必要があるとみられています。
会社の信用に関わると同時に、キャッシュフローも圧迫しかねない、不正請求。発生予防のための情報伝達・確認体制を整備すると共に、万が一の発生時の対応についても、整理しておくことが重要です。
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