「落選狙い」横行で審査厳格化へ、育休給付金制度について
2023/12/06 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
育児休業給付の受け取り期間を延長するため、最初から落選する目的で保育所に入所申請を出す事例が相次いでいることから厚労省が審査の厳格化を検討していることがわかりました。年明けから議論を本格化させるとのことです。今回は育児休業給付金制度を見ていきます。
育児休業給付金とは
育児休業給付金とは、育児休業中の収入ダウンを支援するため雇用保険から支給されるお金で、育児休業を取りやすくし、出産や育児による離職を防ぐことを目的とする制度です。育児介護休業法の育児休暇に基づいて給付されることからその要件や期間、算定方法は企業に関係なく一律なものとなっております。この制度は2021年の育児介護休業法改正によって新設された「産後パパ育休制度」にも対応しております。支給額は育休に入ってから180日までは休業開始時賃金日額に67%の給付率を乗じた額となり、181日以降は給付率が50%となります。休業開始時賃金日額は申請者が育休に入る前6ヶ月間の賃金を180で割った額となります。そして給付金は月単位で計算され、通常2ヶ月分がまとめて支給されることとなります。
育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金の給付条件としては、(1)雇用保険に加入していること、(2)子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日までの機関内に4週間以内の期間を定めて育休を取得したこと、(3)休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12月以上あること、(4)休業期間中の就業日数が10日を超えないこと、(5)子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過するまでにその労働契約の期間が満了することが明らかでないこと(有期雇用の場合)となっております。育児休業給付金の申請は、子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から申請可能となり、その日から起算して2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに提出する必要があります。育休は2回に分割して取得することができますが、申請は1回にまとめてすることが可能です。
育児休業給付金支給期間の延長
育児休業給付金は原則として子が1歳に達する日前までの育休取得に対して支給されます。そして従前は子が1歳6ヶ月に達するまで対象期間が延長できましたが、平成29年10月1日からは子が2歳に達する日前まで延長できるようになっております。延長事由としては、(1)保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているものの、子が1歳6ヶ月に達する日後の期間について当面その実施が行われない場合、(2)常態として子の養育を行っている配偶者(事実婚も含む)が死亡、負傷、疾病等に該当した場合となります。(1)に該当する場合はその確認書類として、市町村が発行した入所保留の通知書などをハローワークに提出することになります。(2)の場合は世帯全員について記載された住民票の写しや母子健康手帳、医師の診断書等を提出することとなります。
コメント
以上のように育児休業給付金制度では、育休の取得から180日までは賃金の67%、それ以降も子が1歳までは50%の給付金を受けることができます。さらに例外的に保育所の入所に落選したなどの場合には最長で子が2歳になるまで受給することが可能です。しかし厚労省によりますと、子供を保育所に入所させる意思が無いにもかかわらず、給付金受給の延長を受けるために落選する目的で抽選倍率の高い保育所に入所申請するケースが多発しているとされます。これにより入所させる意思がある児童や本当に給付を受けて復職を考えている親にしわ寄せが来ていると指摘されております。厚労省は給付延長申請に対して入所意思などを確認する項目を盛り込むなど審査を厳格化する方向で検討を進めているとされます。育休や休業給付金制度に関する政府の動きに注視しつつ社内で周知していくことが重要と言えるでしょう。
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