架空売上による粉飾決算疑い、プロルート丸光の元社長ら3人を逮捕
2023/10/19   商事法務, コンプライアンス, 金融商品取引法, 会社法

はじめに


株式会社プロルート丸光(現、東証スタンダード上場)が2021年3月期の連結決算で粉飾した有価証券報告書を提出していた疑いがあるとして、10月12日、元社長のほか、筆頭株主だったコンサルティング会社の代表ら3人が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されました。

 

1億円粉飾し逮捕


婦人服に強みを持つ衣料品問屋大手として知られるプロルート丸光。今回逮捕されたのは、同社の元社長、現取締役そして筆頭株主だったコンサル会社代表の男の3人です。

報道などによりますと、3人は2021年6月、プロルート丸光の2021年3月期連結決算で(当時ジャスダック上場)、架空の売り上げを子会社のコンサートグッズ関連会社などに計上し、虚偽の連結損益計算書を記載した有価証券報告書を近畿財務局に提出した疑いがもたれています。

具体的には、下記表の左側が本来記載すべき数字でしたが、右側の数字を記載していたといいます。

●営業損失 約4000万円 → 約6370万円
●経常損失 約5550万円 → 約5400万円
●純損失  約6560万円 → 約4390万円


一連の粉飾により、2期連続の最終赤字から黒字転換を装ったとみられています。

本日の一部報道について(株式会社プロルート丸光)

これを受け、証券取引等監視委員会は2022年11月、「株価をつり上げるためにうその情報を公表した」として、金融商品取引法違反の容疑でプロルート丸光などの強制調査に踏み切っていました。逮捕された社長は、経営責任を明確化するためとして、今年8月に社長を辞任しています。

代表取締役の異動(辞任)及び社長交代に関するお知らせ(株式会社プロルート丸光)

 

今年は粉飾倒産の負債額が大幅増


今回、問題となった粉飾決算。企業の財務状況や経営状態をよく見せるべく、不正な会計処理により決算書(貸借対照表や損益計算書等)の内容を操作し、実態と異なる内容の決算書を作成することを指します。
金融機関から融資を受ける際などに、実際には会社経営が悪化し赤字であるにもかかわらず黒字であるように見せかけるケースが、典型的な事例として報告されています。

東京商工リサーチの調査によると、2023年1月から9月における「粉飾決算」での倒産は6件。前年同期比33.3%減少し、コロナ禍前の水準から大幅に減っているということですが、負債総額は558億1,100万円(76.3%増)と大幅に増加したといいます。
そのうち、「10億円以上」の負債額だった会社が5件で、最大の粉飾倒産では350億円の負債を抱えていたということです。


2023年1‐9月「コンプライアンス違反」 倒産は96件 「粉飾決算」は件数減も、 中堅企業の増加で負債膨らむ(東京商工リサーチ)より画像引用

 

“はれのひ”粉飾決算事件の顛末


粉飾決算で思い出されるのが、振り袖の販売・レンタル業者「はれのひ」。2018年1月の成人式の直前に店舗を閉鎖し、それにより、着付けを予約していた新成人が振袖を着られなくなるという騒動を引き起こしたことで知られています。会社社長は騒動の後、家族とアメリカへ渡り数ヶ月間過ごしていましたが、後に帰国。「だますつもりはなかった」などと釈明しました。店舗急拡大により出店費用や人件費が増えたことで、借入金が大幅に増加し、財務状況が悪化していたといいます。

騒動後の2018年6月23日、同社が2016年9月に銀行に対して行った詐欺容疑で社長が逮捕されています。返済する意思がないにもかかわらず新規出店の名目で銀行に売上高を水増し計上した決算書類(平成27年9月期の決算書では約4800万円の売上高を架空計上)を提示し、銀行Aから3500万円、銀行Bから約3000万円をだまし取ったとされています。

一審の横浜地方裁判所は「被害額は多額で、大半は返済されていない。被告は無資力で、被害回復の見込みはない」などと指摘。「経営者として守るべき一線を大きく踏み越えた」として、検察側の求刑5年に対し、懲役2年6ヶ月を言い渡しました。

社長はその後、量刑を争い控訴していましたが、東京高等裁判所は「悪質で被害も多額だ」などとして控訴棄却しています。

 

コメント


刑事罰や民事上の損害賠償請求、上場廃止など、様々な側面で企業に大きなインパクトをもたらす粉飾決算。2022年には、粉飾決算の発覚が元で、マニュアル制作会社、グレイステクノロジーが上場廃止に至っています。
過去の企業不祥事の事例を参考にしつつ、自社でどのような対策が講じられるのか、真剣に検討する必要があります。

 

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