知財高裁が「GUZZILLA」商標を無効判断、商標と類否判断基準
2023/08/02   知財・ライセンス, 商標法

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はじめに

 岡山市の建機部品メーカーが商標無効取消を求めていた訴訟で知財高裁が「GUZZILLA」の商標を無効と判断していたことがわかりました。混同の恐れがあるとのことです。今回は商標権とその類否判断について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、建機部品メーカー「タグチ工業」(岡山市)は建物解体用カッターを「ガジラシリーズ」などと称して販売し、2012年に「GUZZILLA」商標登録したとされます。これに対し「GODZILLA」を商標登録している東宝(東京)が特許庁に商標無効を訴え、19年に登録無効と判断されたとのことです。タグチ工業はその後別の分野で再び出願したものの特許庁は22年にやはり無効との審決を出し、同社は登録無効の取消を求め提訴しておりました。タグチ工業は、がつがつ食べるという意味の「GUZZLE」という英語を組み合わせた造語であるとしております。

 

商標権と商標登録

 商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用する識別標識とされております。商標には文字や図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものが存在し、平成27年からは動きの商標やホログラム商標、色彩商標、音商標なども認められるようになりました。商標権は特許庁に登録することによって発生します(商標法18条1項)。制作した時点で自然に発生する著作権とは異ります。商標権の存続期間は設定登録の日から10年間とされており、更新登録をすることによって延長することが可能です(19条1項、2項)。そして商標権者は、登録された商標につき、指定商品または指定役務について登録商標の使用する権利を専有するとされております(25条)。

 

商標登録無効の審判

 本来商標登録されるべきでない商標が登録されてしまっているといった場合に、特許庁に審判請求することによって商標登録を無効にすることができます(46条1項)。これが商標登録無効の審判です。無効事由としては、登録要件違反(3条)、不登録事由に該当する場合(4条1項)、先願規定違反(8条)、条約違反(46条1項2号)、冒認出願(同3号)、後発的不登録事由(同5号)とされます。識別力を有しない商標、他人の氏名等、他人の周知商標、他人の業務についての商品・役務と混同する恐れのある場合などが挙げられますが、その中でも重要なものとして他人の登録商標に類似する商標があります。この無効審判請求は原則として登録から5年間という期間制限があります(47条1項)。請求されますと、3人~5人の審判官の合議体で審理されます。商標権者には答弁書を提出する機会が与えられ、審理の結果無効との審決が出された場合、送達の日から30日以内に知財高裁に訴えを提起することができ、30日以内に提起されない場合は無効が確定し登録は最初からなかったこととなります(46条の2)。

 

商標の類否判断基準

 特許庁のガイドラインによりますと、商標の類否は、「その外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する」としております。そして判断における注意力の基準として、指定商品又は指定役務の需要者が通常有する注意力を基準として判断するとされます。漢字等の称呼については一般的に自然に読まれる読み方によるとされ、不自然な読み方は考慮しないとされます。また称呼の類否については、聴覚されたときに需要者に与える称呼の全体的な印象が紛らわしいかを考察されます。たとえば「セレニティ」と「セレリティ」のように子音が異なっていても母音が同じであったり、「ビスカリン」と「ビスコリン」のように母音が異なるが子音が同じ場合も両者は近似していると言えます。

 

コメント

 本件で特許庁は、ゴジラには街や建造物を破壊する力強いイメージがあると分析し顧客が誘引される可能性があるとしました。また知財高裁は両者で2、3文字目が異なるがデザイン上見誤るおそれがあり、読み方も「ジラ」が共通していて紛らわしいとし混同を生じるおそれがあるとしました。以上のように商標の類否の判断は様々な要素を複合的に判断することとなり非常に複雑です。商標登録の際に予期せぬ無効審判請求がなされることがあります。また逆に商標権侵害での訴訟で被告側が商標の無効を主張することもあります。商標としての要件やどのような場合に無効請求がなされるのか、またどのような場合に類似していると判断されるかを確認し、自社の知財やIP保護を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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