10月から施行で罰則も、景品表示法のステマ規制について
2023/07/14   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法

はじめに

 広告であることを隠して宣伝する、いわゆる「ステルスマーケティング(ステマ)」に対する景表法の規制が今年10月から施行されます。広告主には罰則も適用されるとのことです。今回はステマ規制について見直していきます。

 

法規制の経緯

 SNSやyoutubeなどで多数のフォロワーや登録者を抱えるインフルエンサーなどが広告であることを隠して、あたかも自発的に使用した感想であるかのように宣伝するステルスマーケティング。販売事業者が行う広告ではなく、第三者が行うことから消費者は容易に信用し購入へと誘引されます。このような消費者心理を利用したいわゆるステマは消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れが指摘されてきました。実際に米国やEUではこのようなステマ行為は法律で禁止されております。一方日本ではステマ行為を直接的に規制する法律は存在せず、日本は「ステマ天国」と揶揄されてきたとされます。そこで消費者庁で開催されてきた「ステルスマーケティングに関する検討会」で議論がなされ、今年3月28日に「内閣府告示第十九号」が出されました。今年10月1日に施行される予定です。

 

景表法による規制

 景表法5条各号では一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある表示を不当表示として禁止しております。まず商品・役務の品質その他の内容が実際よりも著しく優良であると誤認させる表示を優良誤認表示として規制しており(1号)、次に商品・役務の価格その他の取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認させる表示を有利誤認表示として規制しております(2号)。そしてその他商品・役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認させるおそれがある表示であり、自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるとして内閣総理大臣が指定するものも規制されます(3号)。この3号の指定表示としては原産国に関する不当表示、おとり広告、有料老人ホームに関する不当表示などが指定されており、今回新たに内閣府告示19号が追加されました。

 

ステマ規制

 上記内閣府告示19号では、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」をステマ表示とし、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」と定義しております。つまり事業者の広告でありながら、外形上第三者の表示のように見えるものということです。なお景表法の優良誤認表示や有利誤認表示、または5条3号の他の不当表示に該当する場合はそちらが適用されることとなるとされます。また特定商取引法など他の法令が適用される場合でも、事業者が表示内容の決定に関与したとされる実態がある場合はステマ表示規制も適用されるとのことです。

 

ステマ規制の運用基準

 消費者庁の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準によりますと、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」とは客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合とし、(1)事業者自ら行う表示と(2)事業者が第三者に行わせる表示に分類しております。事業者と一体と認められる従業員や子会社の従業員の行った表示も、当該従業員の地位や立場、権限や担当業務、表示目的などを考慮して総合的に判断されるとのことです。第三者に行わせる表示として問題となるのは事業者が第三者に明示的に依頼・指示していない場合とされ、事業者が表示内容を決定できる関係性か、また第三者の自主的な表示と認められない関係性かに分けられており、後者については両者の具体的なやりとりや態様、提供する対価、対価の提供理由、関係性などを考慮して判断されます。逆に事業者と第三者にやりとりが無い場合や表示内容に指示や依頼が無い場合、対価が無い場合、過去に対価を提供した関係性が無い場合などは該当しないということです。

 

コメント

 近年日本ではいわゆるステマ広告が溢れており、その消費者への悪影響が指摘されてきました。SNSなどのインフルエンサーは知り合いの事業者などから個人的に感想の投稿を気軽に依頼される場合が多いとされており、成果報酬として月数十万円の報酬が支払われるケースもあるとされます。しかしこれらステマ行為は優良誤認表示などと同様に消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れが強く、今年ようやく規制される運びとなりました。違反した場合は措置命令が出され、措置命令に違反した場合は罰則として2年以下の懲役、300万円以下の罰金となっております。なお現状課徴金の対象とはなっておりません。また規制対象は広告主である事業者とされステマに利用されたインフルエンサー等は対象外とされます。インフルエンサー等に宣伝を依頼する場合は、ステマとならないよう予め対策を講じておくことが重要と言えるでしょう。

 

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