原発推進CMに出演したタレントの法的責任は問える?
2011/04/10   訴訟対応, 民事訴訟法, その他

原発推進CMに出演したタレントの法的責任を問えるか!?

福島原発事故の影響は思わぬところに出ている。東京電力に限らず、電力各社で原発促進に一役買った有名人たちの法的責任が追及される可能性があるというのだ。
福島原発事故発生前、タレントの薬丸裕英氏(45)は、「環境に優しい原発」を訴え、経済評論家の勝間和代氏(42)は、原子力エネルギーの量とコストの安定性を強調して、「原発推進が日本の経済成長に繋がる」と電力各社のCMで宣伝していた。また、弁護士の北村晴男氏(55)は、エネルギー資源の96%を輸入に頼っている日本の現状を指摘し、「原発の有効利用を」と同じくCMにて訴えていた。
近年、宣伝広告に携わった者の宣伝責任が認められた判決(平成19年11月30日 名古屋地方裁判所)が出ていることから、これらの有名人たちの宣伝行為についても、法的責任が認められるのではとの声があがっている。

平成16(ワ)3089 損害賠償請求事件(平成19年11月30日 名古屋地方裁判所)

【事案の概要】
ある健康食品(以下、本件健康食品)について、被告である医師が雑誌上に、その摂取による呼吸器機能障害の危険性を示すことなく、ひたすら効用のみを示したコメントを寄せたために、原告がこれを信じて、その健康食品を購入・摂取し、呼吸器機能障害を発症した事案である。原告は、医師の宣伝責任を追及すべく、損害賠償(民法709条)を請求した。

※ 民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

【判決の概要】
1.医師の記事と原告の健康被害との因果関係について
医師の寄せた記事は、本件健康食品について、健康になることはあっても、病気になることはないと誤った認識を与えるものであり、原告への本件健康食品の販売を促進し、原告に、本件健康食品による呼吸器機能障害を発症させたと認められるとした。
2.宣伝を行う医師に課せられる注意義務
医師が食品の解説を行った場合に消費者に与える影響力がきわめて大きいこと、また、専門的知識を有する医師にとって、宣伝する食品に関する内外の情報を収集をすることを求めても酷とはいえないことから、
医師は、食品の効用を解説する場合には、その食品の生命・健康を害する危険性の有無についても、その時点の最高の知識と技術をもって確認し、危険性がある場合にはこれを指摘し、消費者に警告するなど適宜な措置を講ずべき義務が課されているとして、この医師の宣伝責任を認めた。

【関連リンク】
平成16(ワ)3089 損害賠償請求事件(平成19年11月30日 名古屋地方裁判所)

雑感

率直に言って、原発推進CMに出ていたタレントの宣伝責任が問われることはありえないと私は考えている。上記判例の場合には、医師が宣伝→それを消費者が信じる→購入→健康被害という因果関係が割と明確だが、今回の場合は、タレントが宣伝→原発建設の気運が高まる→原発建設→震災→各種被害の発生と、タレントの宣伝のせいで原発被害が発生したとの因果関係を認めることが難しい。
また、CMタレントは、上記判例の医師同様、CM視聴者に対する影響力は一定程度に大きいと言えるが、彼らに、原発の危険性の有無について、内外の情報を収集して、危険性を警告するなどの義務を負わせるのは、彼らが原発の専門家ではない以上、少々酷であろう。
このように、原発推進のCMに出ていたタレントが、その法的責任を問われることはなさそうだが、原発の利点ばかりを強調するメッセージを発してきたことに対する多少のイメージの低下は避けられない。タバコの有害成分表示しかり、今後は、メリットのみを一方的に発信するCMは、許されない風潮が生まれそうだ。

上間法務行政書士事務所 行政書士 齊藤 源久(さいとう もとひさ)

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