エヌエヌ生命保険、節税保険の開発・販売等で業務改善命令
2023/02/22 コンプライアンス, 保険業法, 金融・証券・保険

はじめに
2月17日、金融庁は、エヌエヌ生命保険株式会社に対し業務改善命令を出したと発表しました。エヌエヌ生命はオランダのNNグループの日本法人で、中小企業向けの生命保険商品の販売に特化した商品展開を行う保険会社として知られています。今回、エヌエヌ生命が販売していた節税効果をうたった保険商品(以下、「本件節税保険」)が、保険としての趣旨を大きく逸脱していたということです。
本件節税保険は、名義変更による法人から個人(経営者等)への資産移転を用いた節税ニーズに応えるべく開発された低解約返戻金型の(保険料払込期間中の解約返戻金が低く抑えられている)法人向け商品で、同社では、これを一昨年2月から1年間にわたり組織的に販売していました。
処分の理由
金融庁は、今回の処分理由について主に以下の2つを挙げています。
(1)経営管理態勢・業務運営態勢の不備
金融庁は、エヌエヌ生命保険の経営管理態勢・業務運営態勢の不備から、同社では、営業優先、コンプライアンス・内部監査軽視の企業文化・風土が醸成されていると指摘しています。そして、そうした文化・風土が、本件節税保険のような不適切な商品開発・保険募集推進を招いたとしています。
(2)保険本来の趣旨を逸脱した商品開発及び保険募集
金融庁では、法人等向け保険商品に関し、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」を防止するための各種指針を示しています。また、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」には、本件節税保険のような、課税の繰り延べを訴求した保険商品の募集も含まれるとしています。
エヌエヌ生命保険は、こうした状況を認識しながら、経営陣の関与の下、組織的に本件節税保険を開発・販売を決定しており、その悪質性は高いとしています。
上記2つ以外にも、保険募集・引受管理態勢(第1線)、法令等遵守態勢(第2線)、内部監査態勢(第3線)で構成される「3線管理体制」が十分に整備・確立されていなかったこと、金融庁からの報告徴求命令への対応を見る限り、自主的な改善は十分に期待できないことなども処分理由として挙げられています。
処分の内容
今回出された業務改善命令(保険業法第132条第1項)の内容は以下となります。
(1)次の事項に係る業務改善計画の提出(令和5年3月31日期限)と実行
・経営体制の見直しを含む経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化
・保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動による契約の特定、調査等、適切な顧客対応の実施
・営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成
・適切な募集管理・引受管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)
・適切な商品開発管理態勢の確立
(2)提出した業務改善計画について、3ヶ月ごとの進捗・改善状況の報告
そもそも、業務改善命令とは?
業務改善命令は、金融庁が銀行や証券会社、保険会社などに対して出す行政処分の一つです。立ち入り検査などを通じて、法令違反などが判明した際、内部管理体制の見直しを促進するために発令されます。
悪質な法令違反が認められると、業務停止命令や免許・登録の取り消しといった厳格な処分が下されることもあり、その判断は不正行為への関与や隠蔽行為が組織ぐるみであったか否か、顧客の被害状況の規模などをみて、総合的に判断されます。
処分を受けた企業は改善計画を提出し、その改善状況についての進捗を定期的に報告することになります。一方、企業側がこの命令に不服がある場合には取消訴訟を行うことも可能です。
【過去の保険会社の行政処分事例】
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コメント
エヌエヌ生命は、業務改善命令で指摘された内容について、今後同様の問題が起こらないよう再発防止に努めるほか、企業文化・風土の改善、自律的な自己検証機能を含む適切な業務運営を行う組織作りに邁進すべく、以下を実行するとしています。
・ 経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化
・ コンプライアンス・顧客保護を重視する組織風土の醸成
・ 適切な募集管理態勢、引受管理態勢、商品開発管理態勢の確立
処分の重さによっては事業運営・風評等にも大きな影響を及ぼす行政処分。その回避は、法務部門の大きな使命の一つといえます。一方で、法務部門による牽制・助言を希望しない経営陣のもとでは、法務機能は十分に真価を発揮できません。
「コンプライアンス意識の低い経営陣の意識をいかに変えて行くか」、もっとも難しくもっとも重要な課題となります。
【関連リンク】
エヌエヌ生命保険株式会社に対する行政処分について(金融庁)
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