2023年4月施行、中小企業も割増賃金率の引き上げ対象に
2023/02/20   労務法務, 労働法全般, 法改正

はじめに


2023年4月に「法定割増賃金率」の引上げが行われることをご存知ですか?

従来から、法定労働時間を超えて従業員が働いた場合に、企業は割増賃金、いわゆる残業代を支払う必要がありましたが、中小企業において、そのルールが変わるのです。

現在の労働基準法では、月60時間“以内”の時間外労働に対しては、全ての企業において25%以上の割増賃金率となっています。

一方、月60時間“以上”の時間外労働に対しては、大企業が50%以上となっているのに対し、中小企業においては25%以上のままとなっていました。しかし、2023年4月以降は、中小企業の月60時間超の時間外労働に対しても、割増賃金率が50%になります。

 

何が変わる?


2010年に改正された労働基準法。月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は25%から50%へと引き上げられましたが、中小企業については当分の間猶予するとされていました。

しかし、2019年4月施行の「働き方改革関連法」により中小企業の猶予措置の終了が決定。従前は、1ヶ月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)が60時間を超える場合、中小企業の割増賃金率は25%でしたが、今年4月1日以降は50%に引き上げられることになります。

中小企業に該当するか否かは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」などにより異なります。

【参考リンク】
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます(厚生労働省)

割増賃金には3種類あり、時間外手当、深夜手当、休日手当に分類されます。
しっかりマスター労働基準法(東京労働局)

上述のように、月60時間を超える法定時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

また、深夜労働については、月60時間を超える時間外労働を深夜22:00~5:00の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。

そのほかに、休日労働については月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれ、法定休日労働の割増賃金率は35%です。

これは歩合制の場合でも適用されます。

労働基準法で定められている割増賃金の支払い。違反した場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性がありますので注意が必要です。

 

就業規則の変更対応


こうした割増賃金率の引き上げに先立ち、就業規則の変更が必要となる場合があります。特に、深夜労働や休日労働が発生する場合には計算方法がやや異なりますので、改めて就業規則との整合性を確認した方が良いかもしれません。

加えて、就業規則見直しの際に確認したいのが、代替休暇制度です。割増賃金率の引き上げに伴い新しく設けられた制度で、1ヶ月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給休暇を代替休暇として付与することができます。

代替休暇制度は過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことで導入できます。

もちろん、この制度を導入したからといって、従業員は絶対に休暇を取らなければいけないというものではありません。
あくまで労使協定は事業場において代替休暇の制度を設けることを可能にするもので、従業員が実際に代替休暇を取得するかどうかは、従業員自身で決められます。

労使協定では以下の事項を定める必要があります。

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法
②代替休暇の単位
③代替休暇を与えることができる期間
④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

なお、代替休暇の時間数は、1ヶ月60時間超の法定時間外労働時間に対する引上げ分の割増賃金額に対応する時間数です。

 

コメント


政府からの賃上げ要請に続き、残業代の引き上げ猶予期間も終わり、一気に賃金の支払額が増える企業もあるかもしれません。4月までにどのぐらいの支払いが増えそうか、また、残業自体を60時間以内に納められる努力はできるか従業員一人ひとりの状況を確認するのもいいかもしれません。

残業代を支払わないなど、法律に違反すれば罰金を命じられたり、書類送検となった企業もあります。もし支払いが難しい場合には、助成金を申請するなどの対応も検討するとよいでしょう。

 

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