投資会社「G-PEX」社長がねずみ講で逮捕、無限連鎖講とは
2022/12/13 コンプライアンス, 特定商取引法, 金融商品取引法

はじめに
ネットワークビジネス「みんなのたまご倶楽部」を主催する「G-PEX」の社長峯岸正治容疑者(58)と元スタッフの塩沢正人容疑者(63)が先月30日、無限連鎖講防止法違反の疑いで逮捕されていたことがわかりました。全国およそ1万1000人から約3億円を集めていたとのことです。今回は無限連鎖講について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、みんなのたまご倶楽部では、昨年10月の運営開始以降、高齢者を中心にねずみ講方式で会員に勧誘し、半年足らずで1万人に達していたとされます。同倶楽部のパンフレットでは、約2万4000円を支払って入会し、月に約1万4000円を追加で支出して1個150円の高級卵を90個買い取れば報酬が得られるとし、さらに会員の勧誘に成功すれば1人当たり月最大24万円の追加報酬を得られるとうたっていたとのことです。しかし実際には報酬を受け取っていた会員は一部にとどまり、卵も届いていなかったとされます。国民生活センターには昨年11月頃から相談が寄せられており、警視庁生活経済課はねずみ講を運営したとして両容疑者を逮捕しました。
無限連鎖講とは
無限連鎖講(ねずみ講)とは、先に加入した会員が、複数の会員を新たに勧誘して金品を受け取り、その一部を得るという仕組みで次々と段階的に会員を増やしていくというものです。会員数がねずみ算式に増加していくことからねずみ講とも呼ばれ、自分の出資分は新たに次の会員を勧誘して回収しなくてはならず、理論上は最終的に破綻することが明白なものとされます。日本では1960年代からこのようなねずみ講が増加し、特に天下一家の会事件では被害者数約112万人、被害総額は約1900億円に上ると言われております。同事件では首謀者が所得税法違反で逮捕・起訴され、懲役3年、執行猶予3年、罰金7億円の有罪判決がでました。それらの事件を受け、日本では1978年に無限連鎖講防止法が制定され、ねずみ講は全面的に禁止となりました。
無限連鎖講の要件
無限連鎖講防止法2条によりますと、金品を出資する加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に2以上の倍率をもって増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、先順位者が後順位者から金品を受け取る配当組織を無限連鎖講と言うとされております。会員が2人以上を新たに勧誘していくことを前提とし、出資された金品の一部から配当を受けるという仕組みの組織です。同法ではこのような無限連鎖講を開設、または運営した者は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(5条)。それ以外にも勧誘した者も20万円以下の罰金(7条)、業として勧誘した場合には1年以下の懲役または30万円以下の罰金となっております(6条)。そして国や自治体に無限連鎖講の防止に関する調査や啓蒙活動が努力義務として定められております(4条)。
連鎖販売取引とは
ねずみ講に似たものとしてマルチ商法が挙げられます。マルチ商法(連鎖販売取引)とは、健康食品や化粧品などの販売をしながら、新たに会員を勧誘するとリベートが受け取れるといった商法を言います。ピラミッド構造状に会員が段階的に増加していく点でねずみ講に類似しますが、マルチ商法では商品の販売が伴う点で異なります。法規制的には、ねずみ講はそれ自体が完全に違法であるのに対し、マルチ商法それ自体は直ちに違法ではありません。ただしマルチ商法は特定商取引法では連鎖販売取引として規制の対象となっており、勧誘目的を告げることや書面の交付などが義務付けられ、クーリングオフ制度の対象ともなっております。先日も取り上げた日本アムウェイ事件でも特定商取引法違反で摘発されております。また扱っている商品が金融商品等である場合は別途金商法の規制を受けることとなります。
コメント
本件で「みんなのたまご倶楽部」は入会金と1個150円の高級卵を購入し、新たに会員を勧誘することで配当が得られるといったスキームを採っていたとされます。卵の販売勧誘であることからマルチ商法のようにも見えますが、実際には卵は届いておらず実質的にねずみ講と判断されたものと考えられます。以上のようにねずみ講はマルチ商法と異なり、それ自体が禁止されております。名目的に商品の販売勧誘を装っても、実質的にねずみ講と判断された場合は摘発される可能性が高い行為といえます。また会員に新たに会員の勧誘を募るといったスキームの場合、ねずみ講にあたらなくても特定商取引法や金商法など各種法令に抵触する可能性があるといえます。自社でこのような勧誘を行わないよう、またそのような取引に関与しないよう周知していくことが重要と言えるでしょう。
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