大規模買付行為への懸念、ジャフコグループが会社支配に関する基本方針等を公表
2022/08/29 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
ジャフコグループ株式会社は2022年8月15日、独立委員会の設置及び独立委員会委員の選任とともに、会社支配に関する基本方針及び当社株式の大規模買付行為等に関する対応方針を公表しました。今回は、この方針等が策定された経緯とジャフコグループの現状に関して確認していきます。
基本方針等策定の経緯
ジャフコグループ株式会社は、東証プライム市場に上場中の日本最大のベンチャーキャピタルです。今回の基本方針等の策定は、ジャフコグループの普通株式を対象とする大規模買付行為等が行われる具体的な懸念があることに基づくとされています。
具体的には、かつて「村上ファンド」で名を馳せた村上世彰氏の影響下にあり実子でもある 野村絢氏、株式会社南青山不動産及び株式会社シティインデックスイレブンス(以下、併せて「シティら」)によって、ジャフコグループの株式が市場において急速かつ大量に買い集められており、シティらは、2022 年 8 月 5 日時点で株式を15%弱保有するに至っていました。
ジャフコグループは、これらの買い集めに対し、「何らの実質的な協議も行われておらず、その諸条件についてほとんど情報共有がなされていない」とし、また、「本株式買集め及び本株式買増しの諸条件や、本株式買増し後の当社の経営方針等について、何ら実質的な説明を受けていない」としています。
これらの結果、同社では大規模買付者と交渉又は協議を行なうことができるよう手続きを踏むことが共同の利益に資するとし、会社支配に関する基本方針と大規模買付行為等に関する対応方針を策定することとなりました。
会社支配に関する基本方針の内容
ジャフコグループでは、会社支配に関する基本方針として、
①大規模買付者に対し、「株主の判断に必要かつ十分な情報」を提供させること
②大規模買付者からの提案があった際、当該提案が、ジャフコグループの中長期的な企業価値ないし株主の共同利益に及ぼす影響について、取締役会が評価・検討を行ったうえで、当該結果を株主に提供すること
③取締役会が大規模買付行為等又はジャフコグループの経営方針等に関して、大規模買付者と交渉・協議を行い、あるいは取締役会としての経営方針等の代替案を株主に提示すること
以上の3つが取締役会の責務であると規定しています。
大規模買付行為等に関する対応方針
今回の村上氏のような大規模買付行為に対して適切に対応するために、ジャフコグループは対応方針を策定しています。それによると、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かの判断は、最終的に株主によってなされるべきとされています。
そのため、今回の対応方針は、株主意思確認総会により承認が得られ、かつ、大規模買付行為等が撤回されない場合、中長期的な企業価値や株主の共同利益の最大化を図るため、独立委員会の意見を最大限尊重し、所定の対抗措置を発動するという仕組みとなっています。
同社はすでに、本対応方針を適正に運用し、取締役会によって恣意的な判断がなされることを防止するため、独立社外取締役4名で構成される独立委員会を設置しており、同委員会は取締役会に対し対抗措置の発動の是非等を勧告することができます。
対抗措置の概要
ジャフコグループの対抗措置(本新株予約権の無償割当て)としては、割り当てる本新株予約権の内容や株主に割り当てる本新株予約権の数、本新株予約権の無償割当ての対象となる株主、本新株予約権の総数、本新株予約権の無償割当ての効力発生日などが細かく規定されています。
コメント
ジャフコグループは、今回の件に関する株主・投資家への影響についても説明しています。それによると、本対応方針の導入時には、本新株予約権の無償割当ては実施されていないため、即座に株主及び投資家の権利や経済的利益に直接的具体的な影響を与えることはないとしています。文書の後半にはシティインデックスイレブンス、村上氏及び村上氏の影響下にあるファンド等が行った過去の投資事例について多くの事例が載せられており、過去の類似事例の詳細な検討がなされています。このように、ジャフコグループは対抗姿勢を示しており、新株予約権発行によりシティの保有株を希釈化することができるかなど、今後の動向に注目が集まっています。
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