まもなく施行、改正特定商取引法について
2022/05/12 コンプライアンス, 特定商取引法, 法改正

はじめに
昨年成立した改正特定商取引法の一部が6月1日から施行となります。クーリングオフ通知の電子化や定期購入契約の規制が強化されます。今回は改正特定商取引法のうち、令和4年6月1日施行分について概観していきます。
令和3年改正の概要
近年消費者と事業者との間でトラブルが発生しやすいとされていた取引を中心に、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に対する抜本的な対策強化と新たな社会経済情勢の変化への対応により、消費者被害の防止と取引の公正を図ることを目的として今回の改正法が成立したとされます。改正内容は、(1)送り付け商法対策、(2)クーリングオフ通知の電子化、(3)通信販売規制強化、(4)行政処分の強化、(5)海外当局への情報提供、(6)事業者が交付すべき書面の電子化となっております。このうち送り付けられた商品を直ちに処分することができるとする、送り付け商法対策については2021年7月6日に施行済みとなっております。また事業者が交付すべき書面の電子化については2023年6月15日までに施行される予定となっております。以下今回施行分について具体的に見ていきます。
クーリングオフ通知の電子化
特定商取引法では、訪問販売や訪問購入、電話勧誘販売、語学教室やエステティックサロン等の特定継続的役務提供などについて、消費者が事業者から書面を受け取った日から8日間、消費者側から無条件で契約を解除できるとされております。これまではこのクーリングオフをするためには消費者が事業者にその旨の書面を送付する必要がありました。今回の改正で書面だけでなく電磁的記録でも可能となります(9条1項、24条1項等)。電子メールやウェブサイト上のメッセージ機能、FAXなどでも可能ということです。効力発生はこれまで同様消費者が発信した時点とされております(9条2項、24条2項等)。消費者からのクーリングオフ通知を受けるために電子メール送付先などを表示するなどの対応が必要となります。消費者との連絡手段としてメールやSNSを用いたにもかかわらず、それらによるクーリングオフを受け付けないといった制限は無効とされます(9条8項等)。
通信販売規制強化
今回の改正の目玉となっているのが「詐欺的な定期購入商法」の規制です。実際には定期購入契約であるにもかかわらず、そうではないと誤認させる表示が禁止されます。例えば「初回無料」「初回6000円が無料!いつでも解約可能!」「完全無料で今すぐGET!」などと大きく表示しつつ、「※初回無料は定期購入で6回以上購入することが条件です」「※2回目以降の価格は20000円です」などと画面下に小さく表示するといった場合が典型例となります。そして契約解除を妨害する表示も禁止されます。「解約は1週間以内に専用フォームからの連絡でのみ可能です」「電話での解約は受け付けておりません」といった表示です。これら定期購入契約ではないと誤認させる表示には罰則も設けられ、適格消費者団体による差止請求の対象にもなります。それ以外にも通信販売サイト等で、契約の申込み期間、申込みの撤回・解除に関する定め、支払い時期・方法、分量、価格、引渡・提供時期などの表示も求められるようになります。
その他の改正点
上記以外では、行政処分の強化や外国当局への情報提供などが盛り込まれております。立入検査権限の強化や業務停止命令、業務禁止命令の対象となる役員の範囲の拡大、また海外の業者とのトラブルも増加していることから外国当局との連携や情報提供を主務大臣が行うことができるようになります。外国当局から要請があった場合はこれらの情報を刑事事件の捜査等に使用することを同意することができるとされ、国家間で連携して悪質事業者対策を講じることができるようになります。それ以外では事業者が消費者に交付すべき契約書面等について、電磁的方法によることも可能となりますが、施行日時については未定となっております。
コメント
今回の改正特定商取引法の施行により、通販サイト運営事業者は購入の最終確認画面で分量、価格、支払時期・方法、引渡時期、申込期間に加え、申込の撤回・解除に関する表示なども必要となります。また定期購入契約であるにもかかわらず、そうではないと誤認を招く表示については罰則付で禁止されることとなります。一定の訪問販売等についてはクーリングオフについても電子的方法で行えるよう措置を講じることが必要です。近年のインターネットの普及と新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の増大によりインターネットを用いた通信販売等が急速に拡大しております。一方でそれに伴った消費者とのトラブルも急激に増加していると言われております。今一度これらの法改正情報を確認の上、自社のサイト表示などを見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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