NFTがビジネスに与える影響とブロックチェーンへの法的規制
2022/04/12   金融法務, コンプライアンス, 金融商品取引法, 資金決済法

はじめに


SNS、ニュースなどで度々話題に上がっているNFT。言葉は聞いたことがあるけれど詳細はわからないという方も多いのではないでしょうか?NFTには今後のビジネスで活躍が期待されているブロックチェーンという技術が使用されています。NFTビジネスの成長可能性と法的問題点について今回は掘り下げていきます。

 

NFTとは?ブロックチェーンとは?


NFTとは「Non-Fungible Token」の略で日本語では非代替性トークンと訳されます。これに対し、一般的な仮想通貨は、代替性トークンと呼ばれています。その大きな違いは、非代替性トークンがその名の通り、唯一無二であるという認定を受けている点にあります。代替性のあるものの代表例としては、お金、大量生産されている市販品、デジタル領域では例えばフリー素材画像などが挙げられます。一方で、非代替性があるものとしては、一点物の絵画、直筆サイン入りの書籍、有名画家の原画などが挙げられます。ちなみに、トークンとは、ブロックチェーン技術を使用して発行した「暗号資産」を指します。
つまり、NFTとは、「代替性のない世界で唯一無二の暗号資産」になります。

インターネットが普及した現代ではデジタル資産は誰が保有しているのかがわかりにくく、コピー品を簡単に作ることができます。そうしたところに注目が集まったのがNFTです。NFTにより、「このデータは唯一無二である」という保証書がつくような効果が生じるため、デジタル世界においても、現実世界のようにオリジナル版としての価値を証明できるとして話題になりました。

そしてこのNFTの希少性を担保しているのがブロックチェーンという技術になります。ブロックチェーンとは暗号技術によって1つの鎖が折り重なるように記録され、一部分が破損・損失を受けたとしてもシステム全体に影響を与えない構成のことを指します。このブロックチェーンの技術を用いることによって、1つの鎖が1つのNFTの価値を担保することによってより希少性の高い価値を見出すことが可能です。このブロックチェーンの技術はNFTに限らず、顧客情報など、企業にとって重要なデータを管理するために使用されています。

 

NFT・ブロックチェーンの法的規制


このような魅力を持つNFT・ブロックチェーンの技術ですが、まだまだ法整備が追いついていない分野になります。
この点、日本暗号資産ビジネス協会は「NFTビジネスに関するガイドライン」を発表していますが、その中で、NFTの法的性質につき、以下のように整理しています。
 

(1)NFTの保有者に対して「利益の分配」と評価される金銭等の交付がなされる場合
→金融商品取引法上の「有価証券」に該当する可能性が高い。

(2)利益の分配がない場合で、決済手段等の経済的機能を有している場合
→資金決済法上の「暗号資産」や「前払式支払手段」に該当する可能性。さらに、為替取引に該当する場合には銀行法上の「銀行業」や資金決済法上の「資金移動業」に該当する可能性。

(3)利益の分配がなく、かつ、決済手段等の経済的機能を有していない場合
→こうしたNFTについては、現状の日本法上、金融商品取引法や資金決済法等の金融規制や業規制を受けないと考えられる。

仮に、(3)の類型として、日本法上の規制を受けないNFTと判断された場合、いくら価値があるNFTを保有していたとしても法的な裏付けが為されていないことになります。そのため、ブロックチェーンという先進技術によって価値が担保されたものである一方、見方を変えると、単なるデータに過ぎないという言い方もできます。安全な取引のためには、自身が取り扱うNFTが(1)から(3)のいずれの類型に該当するのか、慎重な見極めが必要になります。

 

コメント


今回は、今話題のNFTについて簡単にご紹介しました。NFTの市場規模は、2017年の登場時は、約3000万ドルでしたが、2021年には約7億1000万ドルと、20倍以上の市場拡大を果たしています。まだまだこれから注目されるであろう、新しい技術であることは間違いないですが、今のところは具体的な法規制が十分に為されていないという点は理解しておかなければなりません。法規制が十分でない分、当事者間において契約上の丁寧な合意形成を行う必要が出て来るでしょう。
今後は法規制も進み、ビジネスにもブロックチェーンの技術が浸透してくるのではないかと予想しています。新しい技術に注目するのはもちろんのこと、日本国内での規制状況等について注目していくことも今後の未来を推察する上で重要になりそうです。
 

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