証券担保ローンで初 大和証券に賠償命令
2022/03/23 金融法務, コンプライアンス, 金融商品取引法, 金融・証券・保険

はじめに
リスクの高い「証券担保ローン」を大和証券社員に勧められて多額の損失が出たとして、埼玉県の60代主婦が同社を訴えていた事件で、東京地裁は15日に同社社員の対応に一部不適切な行為があったことを認めて約1899万円の損害賠償支払いを命じる判決を出しました。今回は金融商品取引法における善管注意義務について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、当事件の原告女性は2013年に親からの相続で現金が必要となり、所有する株式の売却を考えていました。しかし相談した大和証券の社員から、株式を売却するよりも証券担保ローンを利用してお金を借り、株式は保有し続けた方が将来的に株価上昇が予想できるので利益になると勧められました。女性は勧められた通り証券担保ローンで借りたお金で投資信託などを購入し、さらにそれを担保にお金を借りることを繰り返したとされています。女性が最終的に借りた総額は9,640万円にまでのぼりました。しかし担保にした証券の株価が下落したことをきっかけに女性は証券の売却を考えたものの、大和証券の社員が売却を引き止めました。その結果女性は約3年間ですべての金融資産を失ったと言います。女性は大和証券の社員に不適切な行為があったとして同社を提訴していました。
証券担保ローンとは
証券担保ローンは所有している証券を担保にお金を借りられるローンです。証券を担保にしている分、他の無担保ローンに比べて低い金利で借りられます。担保にした証券の権利を失うこともないので配当や優待も受けられます。また将来的に株価が上昇した場合、売却するよりも証券担保ローンでお金を借り、株式は保有を続けた方が利益となります。しかし証券担保ローンは担保にしている株式などの株価が下落した場合、追加の担保や一部返済、また証券の売却が求められます。担保価値が変動する証券担保ローンでお金を借りて投資を行うことについては、現金や株式を担保に取引を行う「信用取引」にあたるのではないかと言われています。
金商法上の善管注意義務
金融商品取引法第42条第1項において、金融商品取引業者等は権利者のため忠実に投資運用業を行わなければならないと定められています。また同条第2項において金融商品取引業者等は、顧客に対して善良な管理者の注意をもって有価証券等管理業務を行わなければならないとしています。つまり金商法では金融商品取引業者に対して善管注意義務を課しているということです。善管注意義務に違反し、公益または投資者保護の観点から重大な問題があった場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令の発出等の対応が行われます。今回の事件では、担保価値が下落して証券の売却を希望した女性に対して、大和証券の社員が「意思を変更させて、取引を継続するように誘導している」と認定されました。社員には売却による全額返済を否定しないという注意義務に違反していると結論づけています。原告代理人によると、証券担保ローンによる投資の被害では初の賠償命令だと言います。
コメント
本件では大手証券会社の過度な販売目標が背景にあるのではないかと問題視されています。原告側は、証券担保ローンによる投資は、証券会社にとってローン金利と投資信託などの販売手数料の両方を得やすく、いきすぎた無理な勧誘につながりやすいと主張していました。また原告代理人は証券担保ローンによる投資は自己資金以上の損失が発生する可能性から、実質的な信用取引にあたるのではないかと語っています。女性は「大和証券は会社の問題として、こうしたことがないように取り組んでもらいたい」と話しており、大手証券会社の今後の販売姿勢に注目が集まっています。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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