ナカバヤシ、東洋紙業など、談合事件で公正取引委員会から排除措置命令
2022/03/15   コンプライアンス, 独占禁止法

日本年金機構が年金加入者に送付している「ねんきん定期便」に関する入札で、2016年から談合があったとして、ナカバヤシ、東洋紙業、共同印刷、凸版印刷傘下のトッパン・フォームズ、北越パッケージなどの企業が公正取引委員会から排除措置命令を受けました。今回は、談合の具体的な内容について掘り下げていきます。

 

談合発覚の経緯


朝日新聞の報道によると、各社は2016年5月から、日本年金機構が発送する「ねんきん定期便」や「年金振り込み通知書」など22種類の通知について、印刷・発送準備業務の入札で談合をしたとされています。各社の売り上げは合計で約183億3824万円にのぼるとされ、2019年10月、公正取引委員会は立ち入り検査を実施しました。

年金機構では2016年1月ごろに匿名の談合情報が寄せられていたとのことでしたが、当時は公正取引委員会への通報(「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 第10条」:e-gov法令検索より)は行わなかったとのことです。

公正取引委員会によると、ナカバヤシなどを含む6社が幹事役となり、各社の受注希望について情報を入手したうえで、価格や受注予定となる会社を調整していたとのことです。その後、特定の会社が落札したものを年金機構に無断で委託し、会社同士で会社や売上を分け合っていました。今回の大規模な談合について、公正取引委員会は独占禁止法の規定に基づき、主導役を担った6社の課徴金を5割増やしています。

 

排除措置命令の概要


各社では公正取引委員会からの排除措置命令や課徴金納付命令について文書を公表しています。いずれも独占禁止法第3条「不当な取引制限の禁止」に違反する行為とされ、現在では談合を行っていないことが確認され、今後の再発防止のため必要な措置を講じることが命じられています。例えば、ナカバヤシによると、納付すべき課徴金の額は3億1071万円、納付期限は2022年10月4日までとしています。ナカバヤシの場合、公正取引委員会に対して課徴金減免制度の適用を申請しており、同制度が適用されたため、課徴金額の30%減額が認められています。
 

■課徴金減免制度(調査開始後)
(1)最大3社: 10%免除
(2)上記以外: 5%免除
※1 (1)については、調査開始日前の減免申請者の数と合わせて5社以内である場合に適用
※2 (1)も(2)も、調査への協力度合いに応じて、さらに+最大20%免除


業績への影響


今回の談合は大規模かつ継続的に維持されたものとして、課徴金も高額となっており、各社の業績にも少なからず影響を与えるものと考えられます。ナカバヤシは公表した文書で、2022 年3月期連結業績に与える影響について、2021年11月5日に「業績予想の修正に関するお知らせ」という文書を公表しており、2022年3月期第2四半期において3億1000万円を独占禁止法関連損失引当金繰入額として特別損失に計上済みであることを説明しています。一方で、3億1686万円の課徴金を納付しなければならない東洋紙業では、課徴金分を2022年3月期において独占禁止法関連損失として特別損失に計上するとしていますが、関連する2022年3月期の業績に与える影響については現在精査中であるとしています。
 

コメント


日本年金機構は、今回の談合事件を問題視しており、関係企業に対して今後、違約金や損害賠償を求めるとしています。関係企業側も、今回の排除措置命令および課徴金納付命令が下されたことにより、各社は再発防止の取り組みを徹底することが求められています。ナカバヤシでは公正取引委員会による立ち入り検査後に、代表が全役員・従業員に対して談合の根絶を宣言し、コンプライアンスの徹底を従業員に周知しているとしています。また、独占禁止法など、企業法務に関わる法令遵守、従業員向けの社内研修、モニタリング体制の強化・充実も求められており、各社の今後のコンプライアンス経営に注目が集まっています。
 

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