福原愛さんが就任、社外取締役の要件について
2021/12/21 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
卓球女子2大会連続メダリスト福原愛さん(33)がプロ卓球リーグの社外取締役に就任することが決定しました。17日に開催された臨時株主総会で承認されたとのことです。今回は会社法が定める社外取締役の要件について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、プロ卓球リーグ「Tリーグ」の琉球アスティーダを運営する「琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社」は17日の臨時株主総会で福原愛さんを社外取締役に選任したとされます。日本だけでなくアジアでも認知度が高く、卓球業界における豊富な経験と幅広い見識を有しており、独立した立場から取締役会の意思決定の妥当性、相当性を確保するための助言・提言できる人材であることが選任理由とのことです。なお現在同社は東京証券取引所が運営する特定投資家向け株式市場「TOKYO PRO Market」に上場しております。福原愛さんの就任によりアジア戦略を加速させる予定とされます。
社外取締役とその設置義務
一定の要件のもと会社の経営から独立性を保った取締役を社外取締役と言います。会社法上社外取締役の設置が義務付けられるのは、特別取締役による議決の定めを置く場合(373条)、監査等委員会設置会社の場合(327条4項)、指名委員会等設置会社の場合(400条3項)です。また今年2021年3月1日から改正会社法の施行により、公開かつ大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書の提出義務を負う会社も社外取締役の設置が義務付けられております(327条の2)。つまり上場企業は社外取締役の選任が必要となったということです。また金融庁と東京証券取引所が策定するコーポレートガバナンス・コードでも上場企業に社外取締役の設置を求めております。
社外取締役の要件
会社法2条15号イ~ホでは社外取締役の要件を詳細に規定しております。簡単にまとめますと、(1)現在当該会社および子会社、兄弟会社の業務執行取締役ではなく、親会社の取締役、執行役、支配人、使用人ではないこと。また当該会社の取締役等その他重要な使用人の配偶者や2親等内の親族でないこと、(2)過去10年間に当該会社または子会社の業務執行取締役等でなかったこと、(3)過去10年間に業務執行取締役以外の取締役、監査役、会計参与であった場合には、その就任前10年間に当該会社または子会社の業務執行取締役等でなかったこととされております。現在おより過去一定期間内に会社の経営に関与する者またはその親族等でないことが求められております。
独立役員とは
東京証券取引所では一般株主保護の見地から上場会社に会社法とは別に独立役員1名以上を設置することを求めております。独立役員とは、一般株主と利益相反を生じる恐れのない社外取締役または社外監査役を言うとされております(東京証券取引所上場規定436条の2第1項)。独立性の判断は各会社において実質的に判断する必要があるとされますが、例えば経営陣から著しいコントロールを受ける可能性がある者や逆に経営陣に著しいコントロールを及ぼす可能性のある者は一般株主と利益相反が生じるおそれがあり不適当と言われております。その会社を主要な取引先とする者や役員報酬の他に多額のコンサルタント料などを受ける者なども該当するとされます。
コメント
本件で琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社は取締役5名設置する取締役会設置会社で、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社に該当せず、取締役が6名以上必要な特別取締役も採用していないと考えられることから会社法上は社外取締役は必要としていないと言えます。しかし東京証券取引所の市場に上場していることから独立役員が求められており、同社の発表でも福原愛さんを独立役員として届け出る予定としております。以上のように現在コンプライアンスや会社のガバナンス確保の要請が強まっており、会社法だけでなく証券取引所の規約などでも社外取締役が求められております。経産省の調査では各社の社外取締役の46%が経営経験者でそれ以外は弁護士や公認会計士、税理士、金融機関関係者、学者、官公庁関係者、コンサルタント関係と多種多様なバックグラウンドを持っております。社外取締役候補を探す場合には柔軟に様々な分野から検討することが重要と言えるでしょう。
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