神奈川県 パワハラ裁判で死亡職員遺族に1億支払い和解
2021/09/13 労務法務, 労働法全般, その他
はじめに
2016年に自殺した神奈川県の男性社員(当時37歳)の母親が、県に約1億円の損害賠償を求めた訴訟で、黒岩祐治知事は母親に1億円の和解金を支払うなどの方針を9月6日に明らかにしました。
事案の概要
県によると、男性職員は06年に入庁し、13年に知事室に配属されてから上司から暴言を浴びせられ、16年に財政課に異動した後、残業時間が過労死ラインの月80時間を超えるなど長時間労働が常態化し、同年11月に自殺しました。そして、2019年に公務災害であると認定されました。県によると、和解案の中では、ハラスメントや長時間労働を防ぐ安全配慮義務に違反したことを認めているものの、パワハラについては認めておりません。
パワハラと損害賠償
パワハラが行われた場合には、パワハラを行った社員のみならず会社も責任を負う可能性があります。その場合の法律上の根拠としては、使用者責任(民法715条1項)や不法行為責任(同法709条)、債務不履行責任(415条1項)等が挙げられ、損害賠償請求が認められ得るといえます。使用者責任とは、雇用している労働者が第三者に対して損害を与えた場合に、当該労働者を雇っている会社が負う責任のことをいいます。そして、使用者は加害者たる労働者と連帯して損害を賠償する責任を負うことになります。なお、使用者が労働者の選任や監督について相当な注意を払っていれば免責されますが、実務で免責が認められた例はかなり少ないです。次に、不法行為責任とは、第三者に損害を与えた場合に負う責任ですが、本件のようなパワハラ事案で会社自身に不法行為責任が認められるパターンというのは、パワハラ行為が会社の意思に基づいており会社そのものの行為だと言えるケース等が挙げられます。債務不履行責任とは、会社が労働者に対して負う契約上の債務を履行しなかったことに基づく責任を意味します。パワハラ事案でいうと会社が労働者に対して負う職場環境配慮義務に違反したとして債務不履行責任に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
コメント
パワハラに対する世間の意識が高まってきたとはいえ、未だパワハラを理由とした紛争が多発しています。企業法務従事者としては、パワハラ抑止のためのガバナンス整備に加え、事後的に対応する窓口を社内に設けることでパワハラ問題が訴訟まで発展してしまうことを未然に防げるようにしましょう。
関連コンテンツ
新着情報
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- 解説動画
- 斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
- 斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 視聴時間1時間8分
- 業務効率化
- LegalForceキャビネ公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 松本 健大弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- ニュース
- 全国初、東京都がカスハラ防止条例制定を検討2024.4.23
- 「カスタマーハラスメント」いわゆるカスハラを防ぐため、東京都は全国初の防止条例の制定を検討して...
- セミナー
- 【リアル】連続受講(全6回)-法務担当者向け 法務基礎シリーズ-
- 2024/05/09
- 15:30~17:00
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- NEW
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 業務効率化
- Hubble公式資料ダウンロード