電力自由化により焦り 九州電力ら立ち入り調査を受ける
2021/08/17 独禁法対応, 独占禁止法, その他

はじめに
公正取引委員会は7月13日に九州電力など電力会社4社に対し、事業者向けの電力供給に関して複数の電力会社がカルテルを結んでいた疑いがあり、独占禁止法の不当な取引制限に反する疑いで立ち入り検査を行いました。
事案の概要
2000年以降、事業者向けから段階的に電力小売りが自由化されてきました。それ以前までは、地区ごとに大手電力が独占していた市場が一般に開放され、新規事業者の参入が可能になるに留まらず、大手電力の域外進出も可能になり、競争の激化による料金の引き下げやサービスの向上が期待されてきました。
しかし、カルテルが行われている疑いが生じました。カルテルは電力自由化の上記趣旨に反するものであり、ひいては国民の負担を大きくする結果となるため、一刻も早い事案の究明が望まれます。
不当な取引制限とは
不当な取引制限は、独占禁止法3条で禁止されている行為です。不当な取引制限に該当する行為には、「カルテル」と「入札談合」があります。
「カルテル」は、事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為です。
「入札談合」は、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に、受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為です。
カルテルによる影響
各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決めることによって、各事業者間の競争がなくなり、高い価格が設定されることになります。それにより、消費者は本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなります。
現代では電気やネット契約は生活に欠かせないものとなっており、それらインフラの料金設定を吊り上げることによって、国民の経済事情に多大な影響を及ぼします。
さらに、カルテルによる影響は企業にも生じます。企業としては競争が行われなくとも物が売れる状況にあるため、非効率・不合理化が定着してしまいます。また、カルテルの規模によっては日本の経済を大きく停滞させることにもつながります。
コメント
国民の生活に欠かせないインフラ事業が自由競争に切り替わると、ビジネスチャンスと捉え新規参入する会社や市場拡大を狙う企業が増えるのは必然であったといえます。そして既存の会社としては既存の利益を守るためにカルテルを結ぶのは誘惑的であったともいえます。
しかし、だからといって法を度外視した経済活動によりカルテルを結ぶことが許されるわけではありません。本件のカルテル容疑は未だ容疑であるに過ぎないため、真相の追及が望まれます。
企業法務従事者としては、不当な取引制限規定を正確に理解した上で、自社の既存の取引態様が不当な取引制限規定に該当しないか及び今後行われる取引がこれに当たらないか厳しい目でチェックすることが望ましいでしょう。
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