サプリ通販業者に業務停止命令、特商法の規制について
2021/07/29 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他

はじめに
消費者庁は16日、初回無料などと表示しながら、2回目以降の代金を表示せずにサプリメントの通信販売を行っていた「LIBELLA」(新宿区)に業務停止命令を出していたことがわかりました。同社社長には業務禁止命令も出ているとのことです。
今回は特定商取引法の通信販売規制を見直していきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、LIBELLAは昨年消費者庁に業務停止命令を受けていた「グレース」「ワンダー」「カナエル」の3社と連携して「麹の贅沢生酵素」「麹まるごと贅沢青汁」「Treup」というサプリメントをインターネット上で販売していたとされます。
同社らはこれらのサプリメントを販売しているホームページ上で初回無料と表示しながら最終確認画面で2回目以降の代金を表示せず、また購入者側から解約通知をしないかぎり無期限の自動契約となるにもかかわらずその旨を明記せずに「特定商取引に関する法律に基づく表記」ページに記載していたとのことです。
消費者庁はこれらの会社を統括していたLIBELLA社に業務停止命令を、同社代表取締役に業務禁止命令を出しております。
特商法の通信販売規制
特定商取引法では通信販売に関して広告の表示義務(11条)、誇大広告の禁止(12条)、未承諾者に対する電子メール広告の提供禁止(12条の3、12条の4)、前払式通信販売の承諾等の通知義務(13条)、契約解除に伴う債務不履行の禁止(14条)、顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止(14条)などが規定されております。
広告表示では販売価格、代金の支払い時期と方法、商品の引き渡し時期、事業者の名称や住所、電話番号、代金送料以外に負担すべき金銭があるときはその内容などを表示する必要があります。
また実際よりも著しく優良または有利であると誤認させるような表示が禁止され、消費者があらかじめ承諾しない限りメールによる広告送信も原則禁止されております。そして契約解除の際に代金返還などの義務履行を拒否したり遅延することも禁止されます。
意に反する契約申込の誘引禁止
特商法では上記の他に、顧客の意に反して契約申込みをさせようとする行為が禁止されます(14条)。具体的には、あるボタンをクリックすると、それが有料の申込みとなることを消費者が容易に認識できるよう表示しないこと、申込みの際に消費者が内容を容易に確認し、訂正できるような措置を講じていないことなどが違法となります。
消費者庁のガイドラインによりますと、申込み最終画面に申込み内容が表示されず、また確認するための手段やブラウザで前の画面に戻ることができる旨の説明もない場合や、定期購入契約であるにもかかわらず、その内容のすべてが表示されておらず、容易に認識もできない表示となっている場合には違法となるおそれがあるとされております。
違反した場合
これらに違反した場合には消費者庁による業務改善指示、業務停止命令、業務禁止命令などが規定されており(14条、15条、15条の2)、業務禁止命令に違反した場合には罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(70条2号)。
また消費者は商品の引き渡しを受けた日から8日以内であれば申込みの撤回ができ、誇大広告などに対しては適格消費者団体が差止請求を行うこともできます(58条の19)。
コメント
本件で3社はサプリメントを販売するに際して、申込みの最終確認画面で合計0円と表示し次回以降の代金も表示されていなかったとされ、無期限の自動契約となる旨も見やすく明示していなかったとのことです。
特商法や施行規則ではクリックすることでどのような有料契約が締結されるかを明確に表示し、最終確認画面で契約内容を正確に確認できるよう表示することを求めております。本件では初回無料分を購入したら自動的に定期購入となることや2回目以降の内容が不明確であったと判断されました。
以上のように通信販売では消費者は事業者の表示だけが契約内容を知る唯一の情報となります。自社のHP上の表示や購入画面を今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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