アミューズ 富士山麓に本社機能移転
2021/07/20 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
芸能事務所アミューズは、東京都渋谷区にある本社機能を山梨県富士河口湖町の富士山麓に移転する旨を今年4月1日に発表しました。そして、7月からマネジメント事業などの一部は東京に残しつつ、本社機能を完全に移した上で本格的に稼働し始めました。
事案の概要
アミューズは東証一部に上場している唯一の芸能事務所で、アーティストのサザンオールスターズや福山雅治さん等が所属しています。
2021年3月期の決算では、コロナ禍の影響で売上が前年度を32.3%も下回っており、このようなコロナ禍の影響が、本社移転に踏み切った原因ではないかと思われます。元々富士山麓の河口湖畔には滞在型のレコーディングスタジオがあり、そこでアミューズ所属のアーティストがレコーディングを行っていました。
今回の移転先となる「アミューズ ヴィレッジ」は、敷地面積が約8800平方メートルもある大規模な施設となります。
事務所移転と労働問題
本社勤務の社員からすると、本社移転に伴い居住エリアを変えなければならなくなる可能性があり、企業の判断に社員の生活が大きく振り回されてしまう危険性があります。そこで、今回は遠隔地への事務所移転と労働関係の話をしていきます。
まず、通勤費を支給している企業は、事務所移転に伴い社員の交通費が変わり、通勤手当が変更となる場合には、労働条件の変更を書面で通知しなければなりません。
次に、事務所の移転が原因で退職を希望する従業員が続出する可能性がありますが、その場合には会社都合での解雇として取り扱われることとなり、解雇予告手当を支払う必要があります。解雇予告手当とは、会社都合退職の中でも「解雇」に該当する場合に支給されるものであり、最大平均賃金の30日分の手当を支払う必要があります(労基法20条1項)。
なお、会社側の退職勧奨に従い退職した場合には、解雇予告手当は支給されません。
事務所移転とリモートワーク
リモートワークを推進している企業の社員にとっては、事務所移転はさほど影響がないと思われます。リモートワークによって子を持つ家庭の女性の活躍が脚光を浴びましたが、事務所移転に伴う居住地の変更を拒む優秀な社員に対しても、リモートワークに従事させることでその流出を防ぐことも考えられます。
リモートワークは、なにかと制限があり世の中に浸透しきっていないものではありますが、事務所移転を予定している企業は、人材保持のための手段としてのリモートワークを一考してもよいかもしれません。
コメント
コロナ禍の影響によって、賃料の安い地方へと事務所を移転しようとする企業は少なくありません。移転に伴う出費や社員の流出等、懸念材料が多いことから経営判断上も難しい問題であり、慎重な判断が必要となります。
企業法務従事者としては、事務所移転に伴い社員の通勤時間・居住地・モチベーションへの影響がどれほど出るのかを正確に予測しなければなりません。自社で育て上げた優秀な人材の流出は企業にとって大きな痛手となります。これを防ぐために事前のヒアリングを行うことや、代替案を提示する等、万全を期しましょう。
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