公取委が令和2年度の届出状況を発表、企業結合規制について
2021/07/12 独禁法対応, 独占禁止法, その他

はじめに
公正取引委員会は7日、令和2年度における企業結合関連の届出状況を発表しました。届出を受理した案件数は対前年比で14.2%減の266件だったとのことです。今回は独禁法の企業結合規制を見直して行きます。
令和2年度の届出状況
公取委の発表によりますと、令和2年度の企業結合届出は266件で、そのうち第一次審査の結果独禁法上問題がないとして排除措置命令を行わないとしたのが258件、第一次審査中に取り下げがあった案件が7件、より詳細な審査が必要として第二次審査に移行した案件が1件とされます。
企業結合を検討している会社から公取委に相談があったもの、または公取委が審査を開始した案件で届出が必要ないとされたものは9であったとのことです。
届出件数は生成30年度が321件、令和元年度が310件と減少傾向にあり、過去3年間で実際に独禁法に違反するとして排除措置命令が出された例はありません。
企業結合規制とは
独禁法では企業が株式取得、合併、分割、役員兼任、共同の株式移転、事業譲り受け等を行う場合に、それにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合はこれら企業結合が禁止されます(10条~16条)。
国内市場に一定の影響を与える可能性の高い企業結合については、会社は公取委に事前に届け出る必要があり、届出受理の日から30日を経過するまでは企業結合を実行できません。公取委の審査で問題がなければそのまま企業結合を続行でき、問題がある場合には企業結合を禁止する排除措置命令が出されることとなります。
事前届出が必要となる場合
独禁法では一定の要件を満たす会社の企業結合で事前届出を義務付けております。
まず合併と共同株式移転では、国内売上高の合計が200億円超の会社と50億円超の会社が合併または株式移転をする場合、その両当時会社で届出を要します。
会社分割の場合も国内売上高の合計が200億超の会社と50億の会社で会社分割をする場合に必要となります。
株式取得の場合は売上高の合計が200億超の会社が50億超の会社(子会社含め)の株式を取得し、議決権保有割合が20%または50%を超える場合に必要となります。
そして事業譲り受けでは売上高の合計が200億超の会社が30億超の会社から譲り受ける場合、または30億超の事業の重要部分を譲り受ける場合に必要とされております。
企業結合審査の流れ
企業結合計画が立ち上がった場合、上記の要件を満たす企業は公取委に事前届出を行うこととなりますが、任意で公取委に事前相談を受けることができます。
届出が提出されると公取委では第一次審査に入り30日以内に結果が通知されます。問題がなければそのまま企業結合が続行となります。さらに審査が必要と判断された場合は第二次審査に移行し、報告等の提出が求められます。90日以内に結果が通知され、問題がなければやはりそのまま企業結合が続行でき、問題がある場合には意見聴取を経て排除措置命令となります。
コメント
以上のように企業結合では一定の場合、独禁法上公取委への届出が求められております。公取委の発表にもあるように毎年年間300件前後の届出がなされており、そのうち数件は第二次審査に移行しております。実際に排除措置命令がだされることは非常に稀ですが、一定の取引分野において競争を実質的に制限するおそれがある場合には慎重な判断が必要です。
なお一定の取引分野とは市場のことを意味し、商品範囲や地理的範囲を需要者から見た代替性から判断されます。そして当事会社のシェアが大きいほど競争秩序への影響は大きいと言えます。他社との組織再編やM&Aを検討する際には、株主総会対策だけでなく、それによる市場への影響と公取委への対応も慎重に準備していくことが重要と言えるでしょう。
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