富士そばの労働委員長が申し立て、労働審判について
2021/04/21 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
立ち食いそばチェーン「名代富士そば」の運営会社が労働組合の委員長と書記長を懲戒解雇したのは不当だとして解雇無効を求め東京地裁に労働審判申立てが行われていたことがわかりました。解雇理由は資料改ざんとのことです。今回は労働審判手続きについて見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、「名代富士そば」を運営するダイタングループ(渋谷区)の元社員で労働組合の委員長と書記長が未払い残業代の支払い等を求め東京地裁に労働審判の申立てを行っていたところ、会社側は2人が労働審判に提出した資料を改ざんしたとして懲戒解雇していたとされます。解雇された元社員の2人は解雇無効を求め東京地裁に労働審判を申立てました。なお未払い残業代の支払いを求めていた労働審判は2月に訴訟手続きに移行しているとのことです。
労働審判とは
労働審判手続きとは、給料不払いや解雇など労働者と会社との間の労働関係トラブルを迅速適正に解決するための手続きです。訴訟とは異なり非公開で行われ、裁判官である労働審判官1名と専門知識を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会が原則3回以内の期日で審理を行い、調停や審判によって紛争解決を図っていきます。平均的な審理期間は2~3ヶ月で実情に即した柔軟で迅速な紛争解決が期待できます。なお労働審判に不服がある当事者は異議を申し立てることによって訴訟に移行させることができます。
労働審判手続きの流れ
地方裁判所に労働審判の申立てがなされると、労働審判官は原則として申立ての日から40日以内の日に第1回期日を指定します。相手方は審判官が定めた期限までに答弁書等を提出することとなります。労働審判委員会は原則3回以内の期日で当事者双方の言い分を聴いて争点を整理し、随時調停を試みながら解決を目指します。話し合いがまとまった場合には調停成立となり手続きがそこで終了します。まとまらない場合は労働審判がなされます。2週間以内に異議が申立てられた場合は労働審判は失効し訴訟手続きに移行します。異議申立てが無い場合は労働審判が確定し、それに基づいて強制執行を行うことも可能です。
労働審判のメリット・デメリット
労働審判のメリットは上でも述べたように、簡易・迅速で柔軟な紛争解決が望めることです。通常の訴訟では平均して1年程度の期間がかかりますが、労働審判による場合は2~3ヶ月で終了します。そして基本的に当事者間の話し合いによって柔軟な解決を図ることができます。しかし一方で原則として3回以内の期日で終了してしまうことから、事案が複雑で証拠等の準備に時間を要する場合などには向かず、また相手方が異議を申立てた場合には結局訴訟手続きによることとなり労働審判手続きを選択した意味がなくなる場合もありえるというデメリットがあります。争点が比較的明確で、迅速に紛争を終結させたい場合に利用することが望ましいと言えます。
コメント
本件では富士そばの労働組合員で委員長と書記長であった元従業員が未払い残業代等の支払いを求めていた労働審判中に、2人が提出した資料に改ざんの疑いがあるとして会社側が懲戒解雇されておりました。従業員側は解雇無効を求め8日に労働審判を申立てました。40日以内に第1回期日が開かれる見通しですが、当事者間での対立が強く、前回の労働審判も訴訟に移行していることから今回の手続きも最終的に訴訟に移行することも予想されます。以上のように会社と労働者間に給与や雇用につき紛争が生じた場合には訴訟以外の迅速で柔軟な手続きとして労働審判を利用することができます。しかし期日が3回しかなく、事案が複雑な場合は十分な主張や対応ができずに終わってしまうことも有りえます。労働審判が申し立てられた場合は速やかに専門家の意見を仰ぐなど迅速な対応を行っていくことが重要と言えるでしょう。
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