1月1日から施行、改正労働者派遣法施行規則について
2021/01/12 労務法務, 労働者派遣法, その他

はじめに
令和3年1月1日から改正労働者派遣法施行規則が施行されました。キャリアコンサルティングなどについての説明義務などが盛り込まれております。今回は今年施行となる施行規則の改正点を見ていきます。
事案の概要
昨年2020年9月18日にオンラインで開催された労働政策審議会で労働者派遣法施行規則改正に関する省令案が審議されました。そこではかねてより現行の取り扱いでは不十分、または事業者負担が大きいとされていた事項についての改正案の是非が審議され、キャリアコンサルティング等の説明義務や派遣契約の書面保存義務の撤廃、派遣先が主体となった苦情処理など6つの改正案が決定しました。そのうち4つについては令和3年1月1日から、2つについては同年4月1日から施行予定となっております。以下具体的に見ていきます。
令和3年1月1日施行分
(1)雇入れ時の説明義務
派遣元事業者は派遣労働者雇入れ時に教育訓練、教育訓練計画、キャリアコンサルティングの内容についての説明が義務付けられました。これはかねてより指摘されてきた派遣労働者のキャリアアップサポートがほとんど利用されておらず、形骸化していたという点から雇入れ時に労働者に説明することを義務付け、積極的な利用を促すことが目的となっております。
(2)派遣契約書の電磁的記録での保存
派遣先との派遣契約書はこれまで書面での保存が義務付けられておりました。しかし更新や契約の見直しが頻繁に行われる派遣事業ではその都度書面の整備は事業者負担が大きいと言われており、今回の改正で派遣元管理台帳、派遣先管理台帳と同様に電磁的記録での保存ができるようになりました。
(3)苦情処理について
これまで派遣労働者の苦情処理はもっぱら派遣元事業者が窓口となって行っていたとされております。しかし今回の改正で、派遣労働者の労基法や労働安全衛生法などの労働関係法令に関する苦情については派遣先事業者が主体となって処理することが義務付けられます。
(4)日雇い派遣での休業手当の厳格化
労働者に帰責事由なく派遣契約が解除された場合に、派遣元事業者は新たな就業場所を確保できない場合、日雇労働であっても休業手当等の支払い義務が明確化されました。昨今の新型コロナウイルス感染拡大に伴って真っ先に影響を受ける日雇い派遣労働者などの保護が念頭に置かれているものと思われます。
令和3年4月1日施行分
(1)雇用安定措置についての希望聴取
派遣元事業者は雇用安定措置を講ずるにあたり、派遣労働者の希望する措置の内容を聴取し派遣元管理台帳に記録しておくことが義務付けられます。雇用安定措置とは、派遣先への直接雇用依頼、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用、その他の措置とされております。
(2)マージン率等のインターネット開示
労働者派遣法23条5項によって派遣元事業者に提供が義務付けられている情報をインターネット等での開示が原則とされる予定です。その情報の中にはマージン率が挙げられており、派遣料金から派遣労働者への賃金を引いた金額の割合の開示も含まれております。
コメント
労働者派遣法は2009年のいわゆるリーマン・ショックにより急激な雇用情勢の悪化以降たびたび改正が繰り返されております。日雇い派遣の原則禁止や離職後1年以内の派遣労働者としての雇入の禁止、マージン率公開義務化、すべての派遣事業の許可制化、キャリアコンサルティングの義務化などが相次いで盛り込まれました。今回は労働者派遣法そのものの改正ではなく細目を定めた施行規則の改訂となっており、大きな改正ではありません。しかし雇用時の説明義務や苦情処理を派遣先で行うなど対応が必要な部分もあります。また4月からは派遣労働者からの希望の聞き取りやマージン率などのWEB公開などが求められます。今一度改正点を把握して対応を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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