日本振興銀行の問題点(2)~社外取締役の機能不全~
2010/07/26 商事法務, 金融法務, コンプライアンス, 会社法, 金融・証券・保険

日本振興銀行の木村剛前会長の指示によるメール削除指示が、銀行法違反(検査忌避)にあたるとして、同会長が逮捕された事件。
木村前会長らは昨年6月~今年3月に行われた金融庁の立ち入り検査の際、破綻した商工ローン大手のSFCGとの債権取引や、融資先が加盟する中小企業振興ネットワークの会員企業との取引に関するメールなど約700通を保管先のサーバーから意図的に削除し、検査を妨害した疑いが持たれている。
日本振興銀行は下記5名の社外取締役が就任していた。
江上 剛 氏 作家
平 将明 氏 自民党代議士
三原 淳雄 氏 経済評論家
赤坂 俊哉 氏 弁護士
森重 榮 氏 公認会計士
日本振興銀行は商工ローン業者の営業債権を買い取り、顧客である中小企業への資金提供する「ミドルリスク・ミドルリターン」の事業展開をしていた。同行は設立当初からビジネスモデルの確立に苦心しており、そのような状況下では少々のリスクには目をつぶり、業務執行することは止むを得ない。しかし、購入する債権は業績不振の企業も多く含まれており、融資先に対して不良債権の飛ばし融資・迂回融資も行われていた。
そのような実態は、インターネットでの書き込み・内部告発を通して指摘され、経済誌でも報じられていた。そのような状況にもかかわらず、取締役会で業務執行の意思決定がなされていた責任は重い。
もっとも、木村前会長のワンマン経営はかなりの程度であったことも指摘されており、今後訴訟などを通じて明らかになることであろう。
※ 取締役
株式会社における業務の意思決定及び執行を行う機関であり、委員会設置会社においては業務の迅速化を目的として、業務の意思決定のみを行うことを原則とし、その執行は執行役が行う(会社法416条1項1号)。
委員会設置会社においては、各委員会の過半数は社外取締役でなければならず(会社法400条2項)、利害関係の少ない者を取締役にすることで客観的視点からの意思決定がなされることを目的とする。
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