消費者庁が2業者を公表、消費者安全法の規制について
2020/09/30 消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

はじめに
消費者庁は25日、インターネット接続サービスの勧誘に際し虚偽の説明をしたとして「株式会社レイスペック」と「SailGroup株式会社」の2社を公表しました。2社は勧誘の際にソフトバンクの正規代理店をかたっていたとのことです。今回は消費者安全法の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、レイスペックとSailgroupは「SoftBankAir」と称されるインターネット接続サービスを提供するキャリア事業者と消費者との契約を媒介する業務を行っているとされます。両社はいずれもキャリア事業者から代理店登録を受けておらず、代理店登録を受けている「g-room株式会社」から名義貸しを受けて同社を名乗って勧誘しており、さらにマンションの管理会社から依頼を受けているなどと虚偽の事実を告げていたとのことです。消費者が契約後に管理会社などに問い合わせるなどして虚偽であることが発覚し消費生活センターに多くの相談が寄せられたとされます。
消費者安全法とは
消費者安全法とは、消費生活上の被害に関して消費生活センター等から消費者庁に情報を集約し、迅速に国民に情報を提供することによって被害の拡大を防止することを目的とする法律です(1条)。当初は国民の生命身体の安全に関する「重大消費者事故」のみを対象としておりました。その後2012年改正によって対象が拡大され「多数消費者財産被害事態」にも適用されることとなりました。これにより既存の法令、たとえば消費者契約法や特定商取引法などが適用されない、いわゆる「隙間事案」に対処できるようになったということです。以下具体的に適用対象を見ていきます。
消費者安全法の適用対象
消費者安全法では上でも述べたとおり生命・身体事案に加え「多数消費者財産被害事態」などの財産事案が追加されました。消費者庁のガイドラインによりますと、「多数消費者財産被害事態」とは消費者に財産被害を発生させるおそれのある消費者事故のうち、被害が重大なもので消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する等の取引によるものとされます。事実と異なる虚偽の説明をするといった不実告知などが典型例と言えます。実際に生じた事例として架空の「鉱業権」や「温泉付有料老人ホーム利用権」、国内で換金困難な外国通貨の取引などが挙げられております。
行政処分と罰則
消費者安全法では生命・身体事案および財産事案について国民への注意喚起や情報提供を行うことができます。そのうち消費者契約法や特定商取引法など他の法令の適用対象である場合はそれらの規定によって行政処分が出されることとなります。消費者安全法ではそれら既存の法令の適用を受けないいわゆる「隙間事案」に対して勧告や命令、回収命令などが出せるようになっております。具体的には不当な取引の取りやめやその他必要な措置をとることを勧告し(40条4項)、事業者が正当な理由なく措置を取らなかった場合には措置命令が出されます(同5項)。そしてその命令に違反した場合には1年以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(52条)。
コメント
本件で2社はインターネット接続サービスを勧誘するに際して、実際とは異なりキャリア事業者から代理店登録を受けていることやマンションの管理会社の関係者であるかのように振る舞っていたとされます。これらの行為は消費者安全法の消費者事故に当たると同時に特定商取引法の不実告知にも該当するものと思われます。消費者庁は同法に基づき2社を公表しました。以上のように消費者安全法は消費者被害に関する情報を広く国民に提供し、同時に他法令の適用が無い場合に自ら行政措置を出せることとなっております。いわば法令の隙間を突く悪徳取引を漏れなく規制するための法律と言えます。消費者契約法や特商法などのよく聞く法律に規定されていなくても規制の対象となるということです。自社の広告や勧誘方法がこれらの法令に抵触していないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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