業務委託契約の元支配人らがホテルチェーンを提訴、労働者性について
2020/06/04   労務法務, 労働法全般

はじめに

東京都内のホテルで個人事業主として働いていた元支配人2人が、実質的には雇用契約であったとして労働者としての地位確認と未払い分の残業代含め約6000万円の支払いを求め提訴していたことがわかりました。月の手取りは10万円程度であったとのことです。今回は業務委託契約と労働者性について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、原告側の2人はビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」(大阪市)のJR上野入谷口店で支配人として務めておりました。2人は2018年9月19日から2人で年約1000万円の委託料で業務委託契約を締結し、2020年3月24日まで住み込みで業務を行っていたとされます。アルバイトなどを雇うと人件費は委託料から差し引かれ、月の手取りは1人あたり10万円程度となっていたとのことです。業務内容は詳細なマニュアルに規定され、24時間顧客対応強いられており業務委託ではなく実質労働者であるとして提訴しております。

業務委託契約とは

 業務委託契約とは、一般的に一定の仕事等を行い、それに対して相手方が報酬を支払うといった内容の契約を言います。請負契約の一種とも言えますが、民法上の委任契約や準委任契約に近い場合もあり厳密な定義は無いと言えます。業務委託契約は雇用契約ではないことから原則的には労働基準法や労働契約法などの労働法は適用されません。そのため残業代や深夜手当、有給休暇などはありません。しかし契約の名目が業務委託契約であったとしても、その実態が労働契約と変わらない場合は「労働者」として各労働法が適用されることとなる場合があります。どのような場合に労働者とみなされるのか、以下具体的に見ていきます。

労働者性の判断基準

 業務委託契約を締結している受託者が「労働者」に該当し、各労働法が適用されるかどうかの判断は、契約の形式や名称いかんに関わらず実質的な使用従属性が認められるかが基準となると言われております(さいたま地裁平成26年10月24日)。そしてその判断には、①仕事の依頼・業務の指示等に対する諾否に自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の程度、③勤務場所と勤務時間の拘束性、④報酬の労務対価性、⑤使用機材を会社負担で用意されているか、⑥報酬額が他の社員と同等であるか、⑦その会社の業務への専属性の強さ、⑧就業規則や服務規程の適用の有無、⑨源泉徴収の有無、⑩福利厚生や退職金制度の有無などを考慮要素として判断するとされております。

労働者性に関する裁判例

 労働者性が問題となった事例としては、リラクゼーションサロンを経営する会社と業務委託契約を締結し、整体やリフレクソロジー等の施術を行っていた例で裁判所は、1日8時間の業務従事時間に満たない場合には減額されていたこと、1日5000円の最低保証額が規定されていたこと、契約書に「遅刻」や「始末書」等の文言が盛り込まれていたことなどから実質労働契約であると判断したものがあります(大阪地裁令和元年10月24日)。また運転代行会社で運転代行を行っていた事例で、就業規則に署名押印をさせられ、勤務時間の拘束や職務専念義務を課されていたことから労働者に該当するとされたものもあります(東京地裁平成30年10月17日)。

コメント

 本件で原告側の主張によりますと、ビジネスホテルの一部に住み込み、詳細なマニュアルのもと24時間体制で顧客の対応を強いられていたとされます。これらの点が事実であった場合、委託業としての裁量は無く、会社側の指揮監督下で時間的・場所的にも拘束されていることから労働者性が肯定される可能性はあると考えられます。以上のように裁判所は契約の名目や契約書の文言に関係なく、その実態から実質的に労働者に該当するかを判断しております。いわゆる名ばかり管理職の事例も同様と言えます。他の従業員と同様に会社の指揮監督下で労務に従事させ、同様の賃金体系を適用している場合は契約の名目にかかわらず労基法等が適用されます。業務委託契約を締結している場合は今一度、その実質を見直しておくおくことが重要と言えるでしょう。

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