新型コロナで相談急増、雇用調整助成金について
2020/04/15 労務法務, 労働法全般

はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国の職業安定所や労働局に雇用調整助成金に関する問い合わせが急増しております。今月はすでに前月比で約2倍の件数とのことです。今回は雇用調整助成金について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、現在新型コロナウイルスの感染拡大により一部都府県では緊急事態宣言が出され外出自粛が叫ばれております。また一部業種では営業自粛が要請されており、売上が激減し従業員の雇用継続が困難となっている事業者も増加しております。全国の労働局や職業安定所に寄せられる相談内容は助成金制度の内容や申請手続きについての確認が多く、業種別で見ると飲食業が最多で製造業、卸売業、小売業、宿泊業と続くとされます。職業安定所では積極的な制度の利用を呼びかけております。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、雇用保険法で定められる雇用安定所業の一つであり労働者の失業防止のために事業主に交付される助成金です(62条)。景気の悪化等により事業活動の縮小を余儀なくされる事業者が、従業員を解雇せずに乗り越えるための国からの経済的援助と言えます。給付の対象となるのは休業の他に教育訓練や出向も含まれます。2008年に創設された中小企業緊急雇用安定助成金の制度も2013年に雇用調整助成金に統合されております。
新型コロナウイルスによる特例措置
新型コロナウイルスの感染拡大により4月1日から6月30日までを緊急対応期間として特例措置が実施されます。特例の内容は次の通りです。①対象が経済上の理由により事業活動縮小を余儀なくされた事業者からコロナウイルスの影響を受ける事業者にも拡大されます。②事業活動の縮小比率を3ヶ月で10%以上の低下から1ヶ月で5%以上の低下に緩和。③雇用保険被保険者でない労働者の休業も対象とし、助成率も大企業で2/3、中小企業で4/5に拡大。④事前に求められていた計画届の提出を事後提出に変更し、1年間のクーリング期間を撤廃。⑤休業規模要件の撤廃と残業相殺の停止などとなっております。コロナウイルス対策として従来よりもかなり要件が緩和されております。
その他の要件
雇用調整助成金を受給するためのその他の要件として①雇用保険適用事業者であること、②受給に必要な書類を整備し、労働局等に提出するとともに保管し、当局から求められた場合に速やかに提出できること、③労働局等の実地調査を受け入れることなどが定められております。また過去に助成金の不正受給等を行い一定期間が経過していない場合や過去一定期間内に労働関係法令違反により送検されている場合、倒産中である場合、暴力団等と関連がある場合には対象外とされます。
コメント
現在新型コロナウイルスにより全国的に外出自粛やイベントなどの開催取りやめがなされており、政府による緊急事態宣言で多くの事業が停止しております。これを受け既に派遣の停止や非正規雇用の雇止めが発生しているとされております。一方で厚労省や各自治体では企業への支援策が出されてきております。雇用調整助成金もその一つです。上記のように今回の特例措置によってかなり要件が緩和されており、従来では給付の対象となっていなかった雇用保険被保険者ではない労働者も対象となっております。職業安定所も一度解雇してしまうと自体収束後に再び人材を確保できる保証はないと指摘しております。非常に厳しい状況ですがこれらの制度を最大限活用して従業員の解雇の回避を目指していくことが重要と言えるでしょう。
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