新型コロナで入場制限可能に、株主総会について
2020/04/15 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
経済産業省は2日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて株主総会での入場者数を制限できるとの見解を発表しました。事実上出席者0でも開催可能とのことです。今回は株主総会の手続きについて見直していきます。
株主総会の招集決定と開催
定時株主総会は事業年度の終了後一定の時期に招集する必要があります(会社法296条1項)。議決権について基準日を設けている場合は年度末から3ヶ月以内に開催することとなります。3月31日が年度末日となる会社では通常6月に開催されます。招集決定は取締役会、取締役会非設置会社では取締役の過半数で決定し、代表取締役が招集を執行します(296条3項、298条4項、299条)。開催地については特に制限はありませんが過去の開催地と著しく離れた場所である場合はその理由も定める必要があります(施行規則63条2号)。
招集手続き
(1)通知時期
招集通知は公開会社で2週間前、非公開会社で1週間前までに株主に通知する必要があります(299条1項)。非公開会社でも書面投票または電子投票を採用する場合には2週間となります。非公開会社でかつ取締役会非設置会社である場合には定款でさらに短縮することが可能です。なおこの通知期間は発進日と開催日を算入せずに、その間に14日または7日以上なくてはなりません(大判昭和10年7月15日)。
(2)通知方法
招集通知は取締役会設置会社または書面投票、電子投票を行う場合には書面で行う必要があります(299条2項)。取締役会非設置会社で書面、電子投票を行わない場合には通知方法に制限はなく、電話やメールなどあらゆる方法を使用することが可能です。
(3)その他決議事項等
取締役会設置会社の場合、招集通知には株主総会の議題等を記載する必要があり、記載されていない事項を決議した場合にはその決議は決議取消の訴えの対象となるとされております(最判昭和31年11月15日)。取締役会設置会社では株主は招集通知に記載された事項のみを検討して参加や投票を決めているからです。なお株主総会が開会後、時間不足等により延期した場合、または後日続行が必要となった場合でもあらためて招集通知を出す必要はないとされております(317条)。
経産省の見解
今回の経産省が公表した見解では書面または電子投票を採用して実際に会場に出席することを控えるよう呼びかける配慮が望ましいとしています。また自社会議室を活用するなど会場を従来よりも小規模にし、事前登録などで入場者を制限するなどの措置や、発熱、咳などの症状がある株主には入場を断る措置、また株主総会の時間を短縮するなどの措置も可能であるとしています。その結果事実上出席者が0であっても有効な株主総会となるとのことです。
コメント
上記のように会社法では株主総会の招集、開催についてはかなり詳細な規定を置いており、それらの手続きに不備がある場合は総会決議取消の訴えの対象となることがあります。しかし昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により小規模で簡素化された総会や入場制限や退場の強制なども場合によっては可能とされます。また書面投票や電子投票を活用することにより出席者0の総会も有効となります。海外では既に多くの企業で取り入れられているオンラインによる株主総会なども望ましいと言えます。今後会社法もこのような電子的な方法による柔軟な総会に向けて整備されていくことが予想されております。これを機会に株主総会のオンライン化導入も検討していくことが重要と言えるでしょう。
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