ユニカに開始命令、特別清算のメリット・デメリット
2020/02/05 商事法務, 倒産法, 会社法, 破産法

はじめに
分譲マンション販売を手掛ける「ユニカ」(福岡市)が先月28日、福岡地裁から特別清算開始命令を受けていたことがわかりました。負債額は約112億円とのことです。今回は会社の精算方法の一つである特別清算のメリット・デメリットについて見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ユニカは福岡県を中心に「コアマンション」ブランドで分譲マンションの販売や有料老人ホーム運営などを手掛け、ピーク時には約200億円の売上を計上していたもののリーマンショックの影響で売上は落ち込み、高齢者向け賃貸マンションの開発の頓挫などにより多額の負債を抱えていたとされます。その後事業の縮小と資産の処分を進め昨年12月の株主総会によって解散決議がなされ、福岡地裁に特別清算開始の申立がなされていたとのことです。
特別清算とは
会社が解散すると精算手続きに入ります(会社法475条)。会社法では通常の精算手続の他に裁判所の監督のもとで行われる特別清算が用意されております(510条)。債務超過の疑いがある場合や精算遂行に著しい支障をきたす事情がある場合に裁判所に申し立てることによって利用できます。裁判所が選任する監督委員や調査委員の監督のもとで債権・債務を精算する、いわば通常の精算と破産手続きの中間的な手続きと言えます。経営破綻した会社の破産手続き以外の精算方法です。
特別清算の手続きの流れ
特別清算手続きを利用する場合、申立に先立って会社を解散させる必要があります。会社の解散は株主総会の特別決議によってすることができます(309条2項11号)。債権者への公告、解散登記を行い裁判所に特別清算申立を行います(499条、510条)。特別清算開始命令が出たら清算人は財産調査、財産目録の作成、協定案の作成、債権者集会招集などを行います。債権者集会で債権者と協定が締結されたら裁判所の認可決定を受け特別清算手続きは終了します(567条1項)。なお清算人は裁判所が選任しますが、通常は解散時に株主総会等で選任された清算人がそのまま選任されます。
特別清算のメリット・デメリット
破産手続きは支払不能または債務超過に陥った場合に利用できますが、特別清算は債務超過の疑いがある段階で利用することができます。また破産手続きは破産管財人への報酬など相当のコストがかかりますが特別精算は手続き費用などが破産に比べ低廉です。破産よりも柔軟で迅速な手続きと言えますが、一番大きなメリットは「破産」よりも「特別清算」のほうが社会一般から見たイメージが悪くないという点につきます。その会社だけでなくグループ会社や関連会社に与える印象も違ってきます。逆にデメリットとしては特別清算は株式会社にしか適用がなく、合名会社や合同会社などの持分会社では利用できないことです。また裁判所の決定で強制的に進む破産に比べ、特別決議による解散や債権者の同意が必要など不確実性がある点も挙げられます。
コメント
本件でユニカは昨年12月に株主総会で解散の特別決議を経て裁判所に特別清算を申し立て、先月28日に特別清算開始命令が福岡地裁から出されました。今後清算人は財産調査、財産目録作成、債権者集会での協定へと手続きを進めていくものと思われます。このように特別清算は裁判所が関与するものの、管財人ではなく会社の清算人が主体的に債権債務の精算を行っていきます。債権者との協定などが行われる点は再生手続きに近いところもあります。低コストで利用できる精算手続きと言えます。また上でも述べたように「破産申立」よりも「特別清算申立」のほうが一般大衆に与える印象も違います。自社が経営破綻した場合だけでなく、子会社や関連会社の精算を検討している場合にはこれらの手続きそれぞれのメリット・デメリットを把握した上で選択していくことが重要と言えるでしょう。
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