ウォルト・ディズニー・ジャパンが謝罪、ステルスマーケティングの法的問題について
2019/12/12 コンプライアンス, 民法・商法, 不正競争防止法, 景品表示法

はじめに
映画「アナと雪の女王2」に関するクリエイターによるTwitter投稿がステマに当たるのではないかとの批判を受け、ウォルト・ディズニー・ジャパンは5日、謝罪文を発表しました。関係者間での伝達不足とのことです。今回はステルスマーケティングと法的問題点について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、今月3日午後7時頃、公開中の映画「アナと雪の女王2」を観た7人のクリエイターが「#アナと雪2と未知の旅へ」というハッシュタグをつけてTwitterに一斉に感想漫画を投稿しました。これには当初PRであるという説明がなく、ネット上では「ステマではないのか」との批判が広がっていたとされます。それを受けウォルト・ディズニー・ジャパンは公式サイトで「PR」であることを明記する予定であったが関係者間の伝達不足により明記が抜け落ちていたとし謝罪を表明しております。
ステルスマーケティングとは
ステルスマーケティング、いわゆるステマには厳密な定義は現在のところ存在しませんが、一般的には消費者に宣言と気づかれないように行われる宣伝行為と考えられております。このステマには事業者があたかも中立的な第三者が表示しているようになりすまして行うものと、事業者が第三者に金銭などの利益提供を行っているにもかかわらず、その事実を秘匿して行うものの2通りの態様があるとされております。いずれも消費者や顧客の客観的な選択を阻害するものと言えます。それではこのようなステマ行為は法的に問題はないのでしょうか。以下具体的に見ていきます。
ステルスマーケティングの法的問題
(1)景表法上の問題
消費者庁のガイドラインによりますと、口コミサイト等に自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させ、「当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認させるものである場合」は景表法上の不当表示として問題となりうるとしています。しかし口コミ情報は景表法上の「表示」には該当せず原則としてステマ行為だけでは景表法違反には当たらないと言われております。
(2)不正競争防止法上の問題
不正競争防止法では「商品若しくは役務若しくはその広告」にその原産地、品質、製造方法、用途、数量、役務の質、内容等について「誤認させるような表示」は不正競争行為として禁止されております(2条1項20号)。いわゆる品質等誤認惹起行為と呼ばれ、ステマ行為もこれに該当する可能性があります。外壁塗装リフォーム業者が中立的な第三者を装って口コミランキングサイトを作成し、そこで自社をランキング1位と表示していた事例で裁判所は、ランキング1位と表示する行為は不特定多数の意見を集約した結果、同社のサービスが最も優良であると表示している点で「役務の質、内容の表示」に当たるとして不正競争行為に該当すると判断しました(大阪地裁平成31年4月11日)。
(3)その他の法律上の問題
ステマ行為は上記景表法や不正競争防止法以外にも民法の不法行為や刑法の詐欺罪などに該当する可能性はあります。また利益を受けてステマ行為に加担した第三者等も共同不法行為や共犯となる可能性もあると言えます。しかし実際には「故意」や「過失」などの立証等が容易ではなく現実に訴訟等に発展することは想定しにくいとも考えられます。
はじめに
本件でウォルト・ディズニー・ジャパンはPRである旨を明示した上で7人のクリエイターに感想漫画の投稿をしてもらう企画であったとしています。しかし伝達の不備によりPRである旨の明示が抜け落ちて今回の騒動に発展しました。ステマ行為は上記のように法的に問題となりうるだけでなく、一番の問題は企業のレピュテーションリスク、すなわち評判や信用を損なう危険が大きいということです。今回は故意になされたわけではないですがPR表示が欠落したいただけでここまでの騒ぎとなりました。現在日本ではステマ行為に対して正面から規制する法律は存在しません。しかし欧米ではすでにステマ行為は明確な違法行為として法律で明記されております。今後日本でも法規制が進んでいくことも予想されます。広報やPR活動の際にはこれらの点を踏まえ、今の段階からマニュアル化するなどステマ行為とならないよう社内で周知していくことが重要と言えるでしょう。
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